1980s 洋楽★創作物語

Original Stories of 1980s Pops〜80年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s楽曲が登場!20年振りに描くイラストも一昔前風・・・( ˘ω˘ )

−No.2 Mixed Feelings 交錯する想い

No.2-024 Mixed Feelings 変わらぬ場所

「素直に『一口ください』って言いなよ?」 「一口くれー!」 テーブルを揺らすマークの前にラーメンを置くと彼の〝一口〟で一気に減ってしまい目が点になった。 「……美味しい?」 「Yum Yum !」 結局マークは、僕のラーメンを全部食べてしまったんだ。(既…

No.2-023 Mixed Feelings 不器用な心

ヤスが周りを気にしなくなると、クラスメイトは彼を遠巻きにするようになった。それでも、一人でいることに何の問題も感じず、彼はますます周囲に壁を築くようになっていった。 そのことを、僕に指摘されるまで気にも留めていなかったと言う。 そんなヤスに…

No.2-022 Mixed Feelings 奏でる喜び

意を決したヤスは、大きく深呼吸し僕等のギターにタイミングを合わせた。流れるようなサックスの音色。進めば進むほど、奏でる音に喜びがあふれ出る―― ひとしきり演奏が終わるとパラパラと拍手が聞こえてきた。ガーデンの入り口から数人のギャラリーが入って…

No.2-021 Mixed Feelings 僕のお気に入りは

「ジェム、連れてきたよー!」 10月のハーフターム[学期中の中休み]に入ると、僕等はスターライト・ルームに集まった。 サックスの入ったケースを抱えて僕に手を振るフレッドの後ろに、呆れた様子のヤスがいる。 「おい、いい加減に返せよ⁉︎」 やっぱり、フ…

No.2-020 Mixed Feelings 看板BOY

彼は一瞬、顔を引きつらせて思い切り吹き出したんだ。僕は途端に、恥ずかしくなった。 「――いらっしゃいませ、ヤスアキクン。何が可笑しい⁉︎」 「何って、なんだよ、その格好⁉︎」 ヤスは肩を震わせながら笑っているよ! 「何って、制服だけど!?」 「まさかジ…

No.2-019 Mixed Feelings 憂鬱な月曜日

feat.New Order 階段から降りてきた僕を見てユミコは小さな悲鳴を上げた。そして、すぐに車で病院に連れて行ってくれた。 僕の額は、2針ほど縫うことになりユミコは僕とステイシーに謝り続けていた。 ステイシーは当然、僕の怪我なんて気にもせず僕と一緒に…

No.2-018 Mixed Feelings 君の音楽を諦めない

彼は誰の助けも、必要としない。彼は他人に、何も望んでいない。彼は決して、間違ってはいない。 勉強もスポーツも完璧で口を挟む隙もないヤスに、誰も何も言えないんだ。 でも、まだ13歳の少年が完璧でいること自体が問題なのを、ユミコや先生や僕等が心配…

No.2-017 Mixed Feelings 心閉ざす先に

「あのね⁉︎ 僕は、ただ音楽を演りたいんじゃない。ヤスとフレッドと一緒に演りたいんだ。君が必要なんだよ!」 僕の勢いに、ヤスが後退る。 「……もうサックスは辞めたんだ」 「君がサックスを辞められるわけないよ。現に今だって――」 言いかけた僕の言葉を遮…

No.2-016 Mixed Feelings 遊びじゃない

ジャズ、ジャズ、ジャズ! ダッドからはクラシック、ギター教室ではポップス&ロックそして、BAD MOUTH 時代はパンクやニューウェーブと今まで、それなりに演ってきたけどジャズはまったくノーマークだった。 僕等兄弟はお小遣いを叩いてリズムマシンとベー…

No.2-015 Mixed Feelings 予期せぬ条件

feat.John Coltrane それからしばらく経った、あの日ヤスは妙にピリピリしていた。サックスの音色も硬い。 「何かあった?」 僕とフレッドが尋ねても、ムスッとしたままのヤス。これは……空気を変えねば! 「そうだ、たまには外で演奏しない? 天気も悪くない…

No.2-014 Mixed Feelings 音楽が繋げる距離

pick out:I Want to Hold Your Hand ヤスの部屋は、元おじさんの書斎で防音になっているそうだ。 彼は躊躇いながらもストラップを首に掛けた。ピカピカに磨かれたそのアルトサックスは、埃を被ることなく大切に扱われていた証明だ。 「さっきと同じ3曲メド…

No.2-013 Mixed Feelings 鍵はビートルズ

feat.The Beatles 「彼、どう変わるかな? 確かにさっきのヤスは、ちょっと可愛かったけど」 フレッドの言葉に僕は思わず吹き出した。 「可愛いだって⁉︎ アハハッ!」 「なんだよ⁉︎」ブスッとするフレッド。 「だってヤスも可愛いけど、君だって可愛いんだも…

No.2-012 Mixed Feelings まるでロボット

feat.Styx 「これが怒らずにいられるか⁉︎ しょっちゅう人の家に上がり込んで、邪魔ばかりしやがって! いい加減にしろクソ野郎!」 ヤスの反撃に、僕は〈ピュー♩〉っと口笛を鳴らして片眉を上げた。 「凄い、スラング完璧! Aをあげるよ」 そんな余裕ある僕…

No.2-011 Mixed Feelings 無言の拒絶

その日も 「もう、いい加減にしようよ……」 と気乗りしていないフレッドを無理矢理引っ張って、ヤスの家に向かった。 ヤスは相変わらず自室で勉強している。最近は僕等が来ると、わざと勉強を始めるんだ。 そうされると、ちょっと気が退けるんだけどここで負…

No.2-010 Mixed Feelings 変わらぬ態度

「まあユミコ、うちの子たちがいるから大丈夫よ? 安心してちょうだい」 まったく……外面だけは、いいんだから! ユミコはステイシーの言葉に頷くと僕に笑顔を向けた。 「本当に……ジェム君、お願いします。家うちは私とあの子だけで寂しいので、昔のように気…

No.2-009 Mixed Feelings 母の思い

その後、学校で家庭訪問があり担任の先生が、こうおっしゃったんです。 「岡部君は、勉強もスポーツも非の打ち所はありませんが、クラスでの協調性に欠けるようです。虐められている様子はありませんが、特に親しい友人もいないようです」 確かに、あの子の…

No.2-008 Mixed Feelings 怒りと悲しみ

フレッドが淹れたグリーンティーを味わうユミコの姿は以前はもっとハツラツとした印象だったけれど、今はどこか寂しげだ。 仕事がオフだったステイシーも一緒にユミコの話を聞いた。 それで、ヤスがすっかり冷めた少年になった理由が分かったんだ。 「2年前…

No.2-007 Mixed Feelings 冷めた少年

フレッドが淹れたグリーンティーを味わうユミコの姿は以前はもっとハツラツとした印象だったけれど、今はどこか寂しげだ。 仕事がオフだったステイシーも一緒にユミコの話を聞いた。 それで、ヤスがすっかり冷めた少年になった理由が分かったんだ。 「2年前…

No.2-006 Mixed Feelings 予想外の一言

まだ片付いていない家の中で段ボールの山に埋もれているヤスを見て、僕は一瞬唾を飲み込んだ。 ヤスはすっかり変わっていたんだ。 もちろん背も伸びて凄く成長していたんだけれど、ルックスというよりなんていうか、雰囲気が…… 僕は戸惑いを隠すように笑顔を…

No.2-005 Mixed Feelings 再会への期待

今年はOレベル[一般教育終了試験]も控えているから、かつてないほど勉強の日々にうんざり気味だけどね。 フレッドは、そんな僕に気付くとアコースティックギターを2本抱えてスターライト・ルームに引っ張り出してくれるんだ。 春とはいえ、まだ寒さが残る…

No.2-004 Mixed Feelings 6年ぶりに

pick out:Take Five 初めて入った、おじさんの書斎にはかなりの数の本とレコードがあってまるで、宝物部屋のようだった。 ピカピカに磨かれたサックスでジャズを奏でるおじさんが格好良くて興奮した僕は『星に願いを』を一緒に演奏してもらったんだ。 ダッド…

No.2-003 Mixed Feelings 思い出のサックス

その頃のヤスは、とても大人しくて彼の母、ユミコのスカートの影からおずおずと挨拶したのを覚えているよ。 大きな黒目で、たどたどしく英語を話すヤスが可愛くて、弟のフレッドを思い出させたっけ…… ヤスは僕が学校から帰るのを心待ちにしていたから、僕が…

No.2-002 Mixed Feelings 隣人からのはじまり

とにかく、日本はとってもエキサイティングな国だよ! 僕はマークが怪しい物を買いたがるのを、スタッフ達と一緒に必死で止めながら、街を見て回った。 そして、13時を過ぎた頃にランチとなった。 「スシはもう食ったし、何か珍しいもん食いてえ」 と言うマ…

No.2-001 Mixed Feelings 東京でのオフ

pick out:Paul Young 日本に来て3日目。今日は一日オフなんだ、やったね! 東京でのオフはこれが最初で最後だから、既に皆んなロビーに集まって六本木だ、原宿だと騒いでいた。 各々がマップを手に取り土地っ子のヤスに、色々聞いている。 「俺だってわかん…