1980s 洋楽★創作物語

Original Stories of 1980s Pops〜80年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s楽曲が登場!20年振りに描くイラストも一昔前風・・・( ˘ω˘ )

No.2-015 Mixed Feelings 予期せぬ条件

feat.John Coltrane

それからしばらく経った、あの日
ヤスは妙にピリピリしていた。
サックスの音色も硬い。

「何かあった?」

僕とフレッドが尋ねても、
ムスッとしたままのヤス。
これは……空気を変えねば!

「そうだ、たまには外で演奏しない? 天気も悪くないし、久々にスターライト・ルームで」

僕の提案に、フレッドも
「いいね!」と相槌を打った。

だけど、ヤスは「NO」と呟き
黙ってサックスを片付け始めた。

「大体さ、こんな演奏ことして何になる?」

その言葉に、僕とフレッドは
顔を見合わせた。

「何って……ただ楽しむためじゃ駄目なの⁉︎」

「スターライト・ルームは滅多に人が来ないから、恥ずかしくないだろ?」

「その程度の意識じゃね……」

ヤスは冷めた表情を浮かべながら
続けた。

「外で演るなら、今さらビートルズなんて定番すぎて、子供の小遣い稼ぎにもならない」

「……じゃあ、誰の曲ならいい? Roxy Music? Men at Work? Spandau Ballet? リズムマシンがいるよね」

僕は、サックス・プレーヤーがいる
バンド名をあげつらい、
少しムッとした。
正直、3人で演るために
合わせていた感が
拭えなかったからだ。

ヤスは少し考えた後、
急に立ち上がってレコードを取り出し
プレーヤーにかけた。

流れてきたのは、
ピアノが6/8拍子の
アフロビートを刻み
ソプラノサックスが歌い出す。
これは――ジャズ!

 

「コルトレーンの『マイ・フェイヴァリット・シングス』。これをマスターできるっていうなら、外で演ってもいい」

[John Coltrane『My Favorite Things』Released:March 1961]

 

ヤスは鋭い視線を投げかけてきた。
予想外の展開に、唖然としていたら

「いいね! それ、ダビングさせてよ?」
とフレッドがニヤリと笑った。

意外にも、僕の弟は
売られた喧嘩は買うタイプみたいだ。

始めから読む(No.2-001)

 

『マイ・フェイヴァリット・シングス』は、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中の1曲。でも最近は『そうだ京都、行こう』のCM曲って言った方が、日本人には分かりやすいかも! ところで〝ダビング〟って若い人には分からない?( ̄▽ ̄;)

Music Video
John Coltrane - My Favorite Things
 

 

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