feat. The Beatles
「彼、どう変わるかな? 確かにさっきのヤスは、ちょっと可愛かったけど」
このフレッドの台詞に
「可愛いだって⁉︎ アハハッ!」
と声を出して笑ってしまった。
「なんだよ⁉︎」
ブスッとするフレッド。
「だってヤスも可愛いけど、君だって可愛いんだもの」
さっきまで、ヤスにビビっていた
フレッドの姿が目に浮かんだ。
「悪かったね、可愛くて!」
そう言って、拗ねるところが
可愛いんだよ?
だけど、もう一つ付け加えるなら
フレッドは陰険なんだ。
だって夕食の僕のシチューの中に
肉が1つも、入ってなかったんだから!
さて、ヤスがサックスを演ると
分かったからには
セッションしない手はないよね?
次の日、僕等は早速ギターを抱えて
ヤスの家に上がり込んだ。
だけどヤスは「NO」の一言で
サッと自室へ消えてしまった。
「あの子サックスを習ってたんだけど、主人が亡くなってから辞めてしまったのよ」
ユミコがお茶を淹れながら
落胆する僕等に、笑顔を向けた。
「せっかくギター持って来てくれたんだから、おばさんに何か聴かせてくれる?」
僕とフレッドは照れながらも
喜んで演奏したんだ。
誰かに聴いてもらうのは、嬉しいよね。
ユミコも笑顔で、手拍子している。
3曲目の『シー・ラブズ・ユー』が
終わる頃、視線を感じた。
「ヤス、一緒に演ろう!?」
手を振ってみたけど
「麦茶、取りに来ただけだから」
と相変わらずだ。
そんな彼の態度に
つい煽ってしまった。
「……まさかビートルズの、こんな簡単な曲もできないの? おじさんの腕には、遥かに及ばないってわけだ」
「ビートルズくらい合わせてやるよ! キーは?」
作戦(?)成功!
僕等はユミコに促されて
ヤスの部屋へ上がった。
The Beatles - She Loves You