1980s 洋楽★創作物語

Original Stories of 1980s Pops〜80年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s楽曲が登場!20年振りに描くイラストも一昔前風・・・( ˘ω˘ )

No.6-029 Blue Dreaming 外されたピアス

「ずっと、そう考えていて……だけど夢を諦めてしまうようで、なかなか君に言い出せなかった」

照れながらはにかむアシュリーに
ケイトは何度も頷きながら、
彼の頬を両手で優しく包んだ。

「やっぱり私の好きな青は、この瞳とブライトンの海ね」

そう囁き、彼の唇に
優しくキスをしたケイトは、
もう無理に明るく振る舞う
必要もなさそうだ。

二人が抱き合う姿を背に
静かにドアを開けると、
レイチェルの瞳から涙がこぼれた。
僕は彼女の肩を支えて、
そっと声をかけた。

「3度目のチャンスを待つ?」

レイチェルは肩を竦め、
お互い小さく微笑みながら
部屋を後にした。

◆ ◆ ◆

アシュリーがレイチェルを
送りに行っている間、僕とケイトは
彼女のお気に入りの場所まで
ゆっくり歩いていった。

もう雨はすっかり上がっていたけれど
どこか寂しげな海風が吹いていた。

しばらくの間、二人並んで
黙って海を眺めた。
そよ風が彼女の髪を優しく揺らす。

「ケイト、それ――」

僕は彼女の右耳を指して言った。

「もう、必要ないだろう?」

ケイトは頷くと
右耳のピアスを外して
僕に手渡した。

「本当に……ごめんなさい。まさかジェムがあんな風に、私を思ってくれていたなんて……」

神妙な面持ちで項垂れているケイト。
僕だって、君にはいつも
笑顔でいてほしいから、
軽く咳払いをして
子供みたいにふざけてみせた。

「あー、僕は傷ついた! もう立ち直れない! このまま君と〝ターディス〟に乗って、どこか違う世界に消えてしまいたい!」

プッと吹き出すケイト。

「ジェムは〝ドクター〟より意地悪だわ」

僕は指先で、彼女の涙の跡に
そっと触れた。

「……やっと笑ったね? ずっと泣いてばかりじゃないか」

ケイトは少し笑って

「そうね……19年生きてきて、こんなに泣き通したのは初めてかも。顔が変わっちゃったんじゃない?」

と言いながら、両手で頬を覆い
上目遣いで僕を見た。
やっぱり可愛いけど、
「確かに、少しブスになってる⁉︎」って、からかいたくなるよ。

「ひどーい! ほんと、意地悪なんだから」

お互い声を出して笑い合った。
彼女の瞳からは戸惑いの色が消え、
柔らかな笑顔で僕の腕に触れた。

「風が強くなってきたし、そろそろ戻りましょう?」

「……先に行ってて。もう少し海を見ていたいんだ」

ケイトは軽く頷くと、
そっと腕を離した。

僕は去っていく彼女を見送らず、
ただ静かに海を眺めていた。

そして、大きく深呼吸し
まるで海と空が一つになったような
青い光を全身に浴びると、
この夏の出来事が
すべて幻のように思えた――

◆ ◆ ◆

日が沈むなか、車に乗り込み
エンジンをかけた。
ケイトとアシュリーが並んで
立っている。

「君には本当に世話をかけた。このお礼は、改めてさせてもらうよ」

「フレッドとステイシーに、よろしく伝えてね?」

僕は頷き、ゆっくり車を走らせた。

始めから読む(No.6-001)

 

『ドクター・フー』は、異星人のドクターが生まれ変わりながら1963年以降、休止を挟みつつ現在も続いているBBCのTVドラマ。
 他にNo.5-010で紹介した『イーストエンダーズ』、ITVで1960年より放映している『コロネーション・ストリート』等、イギリスはご長寿ドラマが多いですね!
 下は歴代ドクター、圧巻の勢揃い――って60周年⁉︎ ∑(°∀°)

Music Video
Doctor Who: 60th Anniversary - Universe

 ジェムとケイトの義兄妹恋愛物語も昼ドラっぽい? ギルが実娘と義息子が一線を越えてたと知ったら、この後ひと騒動あってもおかしくないかも⁉︎
 ステイシーはNo.6-006で釘刺したぐらいだから、さすが母は何でもお見通しで動じなさそうだけどw