1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスもメンバーのバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場します。時々イメージ・イラストも掲載!

No.2-008 Mixd Feelings

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「まったく……惜しい奴を亡くしました」

K氏は恭章が抱えていた
主人のサックスに目を止め
話しを続けました。

「その箱、例のラッパかな? 奴はバカが付く程、ラッパ好きだったからなぁ。インテリ風にジャズばかり聴いて……まあ腕前は中々のようだったし、メディアじゃなく楽団にでも入れば良かったんですよ。そしたら、こんな目に遭わずに済んだのにねぇ。でもきっと、あの世で楽しくラッパを吹いてますよ」

K氏の笑顔に戸惑っていると
恭章が突然、立ち上がったんです。

「これはサックスって言うんだ! バカなのは、おじさんの方だ!」

あの子が怒鳴ったのを
初めて見ました。

周りがヒソヒソ言い出すと
K氏は真っ赤になって
立ち去りました。
 
後程、この様子を見ていた
主人の後輩の方から聞いたんです。
実はK氏は、昔から主人を嫌っていたと。

主人が犠牲になった原因は
K氏を庇ったからだとか
K氏の判断ミスだとか
噂になっていると。

なのに栄転となったことを
主人を慕ってくれていた彼は
悔しそうに、話してくれました。

正直、ショックでしたよ。
私も主人から、K氏の話は
よく聞いていたので……

それを恭章は、陰で聞いていたらしく
私に言うんです。

「お母さん、僕あの人のこと許せないよ。だってお父さんの親友だったんでしょ⁉︎ 親友ってあんなものなの?」

私はあの子の素直な感情に、涙が溢れ
抱きしめるばかりでした。

その後は恭章の口から
K氏の話が出ることもなく
日々が過ぎていきました。

始めから読む(No.2-001)

 

 内容的に挿絵は必要ないと思ったけど(お葬式だし)ふと父と一緒で嬉しそうな小学生ヤスのイメージが湧いたので、急きょ描いてみました。もうすぐ父の日だからかな?
〝パパ大好き〟って抱き付いて甘えるジェム(No.1-022)と違って、静かにはにかむ感じが、日本人ぽいしヤスっぽいw