1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスもメンバーのバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場します。時々イメージ・イラストも掲載!

No.2-022 Mixd Feelings

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意を決したヤスは大きく深呼吸し
僕等のギターに、タイミングを合わせる。

流れるサックスの音色。
進めば進むほど
奏でる音に、喜びがあふれ出す。

 

ひとしきり演奏が終わると
パラパラと拍手が聞こえた。

ガーデンの入り口から
何人かのギャラリーが入って来ていて
僕等の演奏に、歓声を浴びせた。

彼等のリクエストに応えて再演。
レパートリーのビートルズ
お披露目すると
ヤスが僕に、歌うように促した。

「ジェムの歌声は、俺のお気に入り」

そうヤスが口ずさみ
僕は照れ臭さを誤魔化すように
思い切り声を出した。

◇ ◇ ◇

それ以来、僕等3人は
再びセッションするようになった。

すっかりジャズの虜になった僕等は
演奏のバリエーションを増やそうと
各々の〝お気に入り〟について
熱くなることもあるけど
でも、また直ぐ笑い合えるんだ。

もうヤスの口から
「サックスを辞める」なんて
出てこない。

 

ヤスは話してくれたよ。
あの夏の日
急に不機嫌になった理由を。

あの時は、東京にいる祖父から
「お盆なのに、日本に帰ってこないなんて」
と怒られて、イラついていたと。

ヤスの祖父は、教育熱心な人で
亡き末っ子の忘れ形見である
ヤスへの期待は大きいらしく
母子家庭を訝しんでいるとか。

ヤスを養子に、という話も
あったんだって!

母と、母との自由な生活を守るためにも
「絶対に成績は落とせないし、問題も起こせない」とヤスは言う。

それから
日本の小学校に入った時。

言葉の問題は程なくして
解消されたけど
イギリスで暮らしていたヤスと
クラスメイトとは
考え方も、見るテレビ番組も違って
話が合わなかった。

それでも始めの頃は
クラスメイトの様子を
伺っていた時期もあったけど、
父の友人K氏のことがあって以来
他人を受け入れる必要を
感じなくなってしまったんだ。

始めから読む(No.2-001)

 

『近い将来、もっと高めたいんだ。この場所から始まった僕らの仕事を』ジャズの巨匠ジョン・コルトレーンの名言だそうです。この物語にピッタリ!(こじつけw)