周りを気にしなくなると
皆んな彼を、遠巻きにするようになり
一人でいても、なんてことはないと
気付いたヤスは、ますます周囲に
壁を築いていった。
そのことを、僕に指摘されるまで
気にも留めなかったと言う。
フレッドが
「最初に挨拶したとき『邪魔、どいて』って凄く冷たかったよね? 愛想が無いんだよ、ヤスは」
と意地悪く言うと
「あの時は荷物で両手が塞がってたのに、握手できるわけないだろ? 荷物を置いて下に降りたら2人とも、もう帰ってたじゃないか。悪かったな、愛想無くて!」
ヤスは口を尖らせて
「大体、母さんは心配性なんだ。俺は大丈夫だって何度も言ってるのに。あのカウンセリングの先生も、苦笑いしてたし。それと俺の従兄弟達! おもちゃ自慢ばかりしてくる、しょーもない連中の相手しろって、何の罰ゲームだよ⁉︎」
堰を切ったように
溜め込んでいた不満を口にした。
「それに、いくら昔馴染みだってジェムにはジェムの生活があるのに、俺のことで一々付き合わせるなんて、どうかしてる。ジェムだって頼まれたら断れないの、知ってるし……」
それを聞いて感激した僕は
思わずヤスに抱き付いた。
(直ぐ避けられたけど)
そう、僕等はヤスを
心配しすぎていたみたいだ。
彼はちょっと、自分の気持ちを
表現するのは不器用だけど
こんなに周りに気を使ってくれる
いい奴なんだ。
「でもヤス、母親っていうのは、そういうもんじゃないの? 大袈裟な程、子供を心配するんだよ」
「フレッド君、僕はその意見には賛同しかねるね」
「……ジェムって、まだステイシーと上手くいってないわけ? ガキくせー」
ヤスが白い目で僕を見る。
ほっといてくれ!
★ ★ ★
「おーいジェム、野菜ばっか食ってると、麺が伸びるぞ⁉︎」
マークが僕の頭を突いた。
そう言われても
このタンメンってラーメン、
キャベツとモヤシがテンコ盛りで
なかなか麺まで
たどりつけないんだけど⁉︎
まあ、彼の要求は分かってるよ。
土地が変われば野菜も変わる。向こうで生活したら日本料理以前に、日本の食材が恋しくなりそうですね (*´༥`*)モグモグ