フレッドが淹れた
グリーンティーを味わうユミコの姿は
以前はもっと、ハツラツとした
印象だったけど
今はどこか寂しげだ。
仕事がオフだったステイシーも一緒に
ユミコの話を聞いた。
それでヤスが
すっかり冷めた少年になった理由が
分かったんだ。
「2年前、主人は仕事で某国へ行ったんです。ええ、紛争の取材で……亡くなったんです、主人は――」
ユミコの声が、わずかに震えた。
僕等は口々にお悔やみを述べた後
僕はつい、言ってしまった。
「だからヤスは、あんなイケスカな……んっ!」
フレッドに小突かれ、口を改めた。
「――ヤスはおじさんの死が、凄くショックだったんですね?」
「本当に、昨日はごめんなさいね……ただ、あの子のあの態度には、別の要因もあると思うんです」
ユミコは語り始めた。
◇ ◇ ◇
あの子は……主人も私も
ずっと仕事をしていて
しかも一人っ子だったせいか
もともと大人しく、手も掛からず
引っ込み思案でした。
今思うと、友達らしい友達は
ジェム君ぐらいだったわ。
日本に戻ると
早く日本に馴染めるように
公立の小学校に通わせたんですけど
言葉の壁もあり
なかなか難しいようでした。
見兼ねた私は
たまたま近くに住んでいた
イギリス人夫婦の経営する
英語塾に通わせて
ようやっと恭章に、笑顔が戻りました。
そんな中、主人を亡くして……
あれは主人のお葬式の時でした。
式が終わり、私は関係者の方々に
挨拶をしていました。
そこに、主人の長年の親友で同僚の
K氏がいらしたんです。
当時想定していた紛争は某アラブ国ですが、同時期に他に何があるか調べてみると、中東、アフガン、中央アメリカと絶え間なく――そして、もう21世紀になったというのに変わらない世界は、痛ましい限り……