今年はOレベル[一般教育終了試験]も
控えているので
かつてないほど勉強の日々に
うんざり気味だけどね。
フレッドは、そんな僕に気付くと
アコースティックギターを2本抱えて
スターライト・ルームに
引っ張り出してくれるんだ。
春とはいえ、まだ寒さが残るなか
白い息を吐きながら、ダッドの形見の
Martin D-28 を弾くフレッドは
懐かしいダッドの姿を彷彿とさせた。
(ダッドより、まだミニサイズだけどね)
2人でのセッションは楽しくて
精神が満たされるのを感じた。
そんな時だった。
隣の家に、ヤスが帰ってくると
聞いたのは。
もう嬉しくて、毎日のように
ヤスの話をしたよ。
フレッドにしてみれば
ヤスが来るまでは、煩くて
しょうがなかったんじゃないかな?
(それでも話をウンウン聞いてくれる
最高の弟なんだ!)
そのぐらい期待に胸を膨らませて
ヤスが来るのを待っていた。
そしてつくづく、あの不良少年のままで
いなくて良かったと、
家に帰っていて良かったと思った。
6年振りの再会で
僕があのままだったら
ヤスはショックを受けるだろうからね。
ところが
地味にショックを受けたのは
僕の方だった。
◇ ◇ ◇
ヤスが戻って来た、あの日。
学校から帰宅して、家に入ろうとしたら
隣の玄関から出てきたユミコに
バッタリ遭遇!
「ジェームス君よね⁉︎ 大きくなって!」
ユミコは嬉しそうに声をかけてくれて
たまたまポーチにいたフレッドも一緒に
半ば強引に、家に招き入れた。