彼は一瞬、顔を引きつらせ
思い切り吹き出したんだ。
僕は途端に、恥ずかしくなった。
「――いらっしゃいませ、ヤスアキクン。何が可笑しい⁉︎」
「何ってなんだよ、その格好⁉︎」
ヤスは肩を震わせ
笑ってるよ!
「何って、制服だけど!?」
「まさかジェムのバイト先が、スイーツショップだとは思わなかった」
そう、僕は近所でも割と評判な
スイーツショップの看板BOYなんだ。
蝶ネクタイにブラック・エプロン
自分では結構、気に入ってるんだけど
そんなに可笑しいかな。
「いいから注文は⁉︎ わざわざ僕を、揶揄いに来たんじゃないだろ?」
いつまでも笑ってるヤスを急かした。
「ああ、これから君の家に行くんだけど、母さんが手土産、買って来いって」
フレッドの奴、
僕が此処に居ることを
ユミコに教えたな⁉︎
「でも、ジェムはバイトなんだ……」
ちょっとホッとした表情の彼に
意地悪したくなる。
「暫くバイト休んじゃったからね。今クビになったら、ギターの修理代も出せないよ。シーケンサーも買ったし、スッカラカンなんだ」
「それは……もちろん俺だってカバーする、ちゃんと弁償する」
表情を曇らせるヤスに
僕は小さく笑った。
「まったく……かわいくない奴だなぁ。素直にSorry[ごめんなさい]って言えば、それでOKなの!」
そしたらあいつ
なんて言ったと思う?
「――My Bad[悪かったな]」
〈――ぷっ!〉
僕等は同時に吹き出した。
そのヤスの笑顔を見て、今度こそ
僕等は上手くやっていけるって
確信したんだ。
だけど、それだけじゃ足りない。
言ったよね?
〝君と君の音楽を、絶対に諦めない〟って。
急がないと、イギリスの冬が
あっという間に来てしまう。
その前に、スターライト・ルームに
行かなくちゃ!