「まあユミコ、うちの子達がいるから大丈夫よ? 安心してちょうだい」
まったく……
外面だけは良いんだから!
ユミコはステイシーの言葉に頷くと
僕に笑顔を向けた。
「本当に、ジェム君お願いします。家も私とあの子だけで寂しいので、昔のように気軽に来てね?」
ああ、僕はつくづくお人好しなんだ。
そんな風に言われたら
無視するわけに、いかないだろ?
「分かりました、任せてください!」
って胸を張って言ってしまった。
フレッドが、白い目で見ているのは
気付かない振りしておこう……
それから3ヶ月
僕は義務教育を終了した。
大学に行くつもりはなかったけど
僕の学校は、18歳までの一貫校だから
そのままシックススフォーム
[第六学年・日本の高校に相当]に進級。
Aレベル[大学入学資格試験]を
目指すよう、ミスターに促された。
具体的な将来のことは
まだ考えてないけど、やっぱり
音楽に関連する道に進みたいので
何かそういったアルバイトをしようと
探し始めた。
すると、どこから聞きつけたのか
ご近所のMs.オコナーから
バイトを紹介されたんだ。
正直、仕事内容は
これじゃない感が強かったけど
まあ、バイト代が良かったし
店長もいい人だったから
目を瞑ることにしたよ。
フレッドの方も
サマーアクティビティ[夏期体験学習]や
フットボール[サッカー]で
忙しいみたいだけど
そこは兄ちゃん権限を利用して(!)
一緒にヤスの家に
顔を出すようにしたんだ。
だけど、当のヤスの反応は
3ヶ月前とまったく同じ。
つまり、僕等に
てんで無関心ってこと。
僕等が話しかけても、徹底無視。
ユミコの顔を立てて
黙ってるんだろうけど
嫌なら嫌っていう感情を
少しは見せてくれてもいいのにさ!