「あのね⁉︎ 僕は、ただ音楽を演りたいんじゃない。ヤスとフレッドと一緒に演りたいんだ。君が必要なんだよ!」
僕の勢いに、ヤスが後退る。
「……もうサックスは辞めたんだ」
「君がサックスを辞められるわけないよ。現に今だって――」
言いかけた僕の言葉を遮るように
ヤスは強く言い放った。
「勝手に決めつけるな! そうやって何でもお見通しな態度、頭にくる!」
「二人とも、やめなよ」
険悪なムードが一気に広がり
心配そうなフレッドに、
僕は目で〝大丈夫〟と合図して
ヤスに向き直った。
「実際君のことは、わかってるつもりだけど? 小さい頃からの仲だもの」
「6年も離れてたのに⁉︎ ガキの頃とは性格なんて、変わるに決まってる」
「確かに、昔に比べたら、ちょっとひねくれてるけどね」
僕は軽く笑いながら
ヤスの目を真っ直ぐ捉えた。
「でも『忘れないで』って言ったのは、君だろ?」
そして、ゆっくりとヤスに近づく。
「君は全然変わってないよ。サックスは、辞めない」
ヤスは憤然として
声を荒らげた。
「何でそう言い切れる? 自分のことは、自分が一番良くわかってる。ジェムが俺をどう思おうと勝手だけど、好奇心で構われるのはたくさんだ!」
「好奇心って……そんなんじゃないよ」
ヤスの頑なな態度に、
僕は数年前の自分を重ねていた。
自分で自分を
どんどん深みに追い込んで、
どうすることもできなくなった
あの頃――
僕は誰かが助けてくれるのを
待っていたのかもしれない。
でも、ヤスは違う。
とても思春期な内容で小っ恥ずかしいですが、これは自分自身がこの年頃の時に実際にあった、友達とのやりとりが含まれています。
〝I need you〟がパワーワードだったあの頃に、こうして書いて残さなかったら、大人になった今では忘れてしまったかもしれない……そう思うと恥ずかしながらも、大事にしたいエピソードなのです。