1980s 洋楽★創作物語

Original Stories of 1980s Pops〜80年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s楽曲が登場!20年振りに描くイラストも一昔前風・・・( ˘ω˘ )

No.2-017 Mixed Feelings 心閉ざす先に

「あのね⁉︎ 僕は、ただ音楽を演りたいんじゃない。ヤスとフレッドと一緒に演りたいんだ。君が必要なんだよ!」

僕の勢いに、ヤスが後退る。

「……もうサックスは辞めたんだ」

「君がサックスを辞められるわけないよ。現に今だって――」

言いかけた僕の言葉を遮るように
ヤスは強く言い放った。

「勝手に決めつけるな! そうやって何でもお見通しな態度、頭にくる!」

「二人とも、やめなよ」

険悪なムードが一気に広がり
心配そうなフレッドに、
僕は目で〝大丈夫〟と合図して
ヤスに向き直った。

「実際君のことは、わかってるつもりだけど? 小さい頃からの仲だもの」

「6年も離れてたのに⁉︎ ガキの頃とは性格なんて、変わるに決まってる」

「確かに、昔に比べたら、ちょっとひねくれてるけどね」

僕は軽く笑いながら
ヤスの目を真っ直ぐ捉えた。

「でも『忘れないで』って言ったのは、君だろ?」

そして、ゆっくりとヤスに近づく。

「君は全然変わってないよ。サックスは、辞めない」

ヤスは憤然として
声を荒らげた。

「何でそう言い切れる? 自分のことは、自分が一番良くわかってる。ジェムが俺をどう思おうと勝手だけど、好奇心で構われるのはたくさんだ!」

「好奇心って……そんなんじゃないよ」

ヤスの頑なな態度に、
僕は数年前の自分を重ねていた。

自分で自分を
どんどん深みに追い込んで、
どうすることもできなくなった
あの頃――

僕は誰かが助けてくれるのを
待っていたのかもしれない。

でも、ヤスは違う。

始めから読む(No.2-001)

 

 とても思春期な内容で小っ恥ずかしいですが、これは自分自身がこの年頃の時に実際にあった、友達とのやりとりが含まれています。
〝I need you〟がパワーワードだったあの頃に、こうして書いて残さなかったら、大人になった今では忘れてしまったかもしれない……そう思うと恥ずかしながらも、大事にしたいエピソードなのです。