1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.2-011 Mixd Feelings

その日も

「もう、いい加減にしようよ……」

と言うフレッドを、無理矢理引っ張り
ヤスの家に向かった。

ヤスは相変わらず、自室で勉強している。
最近は僕等が来ると
わざと勉強し出すんだ。

そうなると多少、気が退けるんだけど
ここで負けてはいられない!
僕はニコニコと話しかけた。

「また勉強? ホンと頑張るね」

ヤスは見向きもしない。

「勉強もいいけど、せっかくの夏休みなんだからさ、息抜きくらいしない?」

ヤスは黙々と
ペンを走らせる。

「返事くらい、してくれたっていいんじゃない?」

僕も段々、顔が引きつってくる。
フレッドは諦めムードだ。

まったくヤスの奴
表情一つ、変えないんだから!
毎回こんな調子だと
さすがに嫌になってくるよ……

そう溜め息混じりに視線を外すと
何かがキラリと光るのに気付いた。

「あっ、サックスだ! もしかして、おじさんの? 懐かしいなぁ――」

奥のチェストの上に置いてあった
サックスに近付こうとしたら

「触るなっ!」

ヤスが怒鳴ったんだ。
僕は思わずニヤッとした。

「やっと喋ってくれたね」

その時の、あいつの顔!
でも、また直ぐ無表情になって
黙ってサックスを片付けてしまった。

「こっちのケースも一回り小さいけど、サックスだよね⁉︎ これは、もしかして君の?」
と試しに手を伸ばしてみたら

「触るなって言ってんだろ!」

ヤスはやっぱり
感情をあらわにしたんだ。
僕は肩を竦めて表情を伺った。

「別にいいじゃないか、ちょっとくらい見せてくれたって。そんなに怒るなよ⁉︎」

「あ、あの……」
フレッドはオロオロしている。

振り向いたヤスが、キッと睨んだ。

「――怒るなだと!?」

始めから読む(No.2-001)

 

 こらこら、人の物を勝手に触っちゃいかんよ? ジェムってば、好きな子の関心を引きたくて意地悪する典型か⁉︎ そんなんじゃ女の子にモテないよ〜


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