1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.5-013 Don't Be Scared

feat. Crowded House

そして、久々に5人揃ったバンドは
思い切り演奏を楽しんだ。


――ああ、これ、この音と一体感なんだ、求めていたのは!


メンバー全員が
それを噛み締めていると確信した。
許されるならマークには
本当に早く戻って来て欲しい。

「待ってるよ、マーク」

笑顔を見せる皆んなの姿が
強く胸に残った。

◇ ◇ ◇

マークがウォルターを連れ
カナダへ帰国して数日後、
僕等はスティーブンのオフィスに
集まっていた。

「もちろんジェム、君が無実なのは分かっている。しかし知っての通り今ノーマンレーベルの内情は非常に厳しく、イメージダウンやスキャンダルになる事は極力避けたいと、非常にナーバスな状態だ」

しかもクビにした
プロデューサーのロバートも
ドラッグによる交通事故を
起こしてしまったそうだ。

「どうにも私達がしたことは、彼の自尊心を深く傷つけてしまったようで、残念なことだが……」

ロバートがアメリカで成功したと
言ったのは誰だっけ?
つくづくドラッグの恐ろしさを
実感した。

「私としても君達を、ベストな状態でデビューに持っていきたいんだ。ノーマンレーベルに、決して君達を埋もれさせたりはしないと約束させよう」

「分かりました。一年……ですね?」

覚悟を決めて席を立ち
ティーブンと握手を交わした。

「一年後、成長した僕等を見てください」

 


オフィスの外に出ると
僕は立ち止まって振り返り
改めて頭を下げた。

「本当に、ゴメン――!」

項垂れる僕に、3人は
温かい声をかけてくれた。

「兄ちゃんが悪いんじゃないよ、元気出して!」

「1年なんて、あっという間だ! やらなきゃならないことは山とある。そうだろヤス?」

「ドント・ドリーム・イッツ・オーバー」

ヤスの一言に
僕等は一瞬、顔を見合わせ
そして笑顔で歌いながら
歩き出した。

 

 〜 さあ今 さあ今 それが終わった事だと夢にも思わないで 世界がやってくる時 奴等はくる 僕達の間に壁を作るために

[Crowded House『Don't Dream It's Over』Released:20 October 1986]

 

始めから読む(No.5-001)

 

 クラウデッド・ハウス!\(^o^)/ って英国じゃなくオーストラリアやないかーいと、wiki見て思い出す (汗) でも80年代中半になると、米国のソウルやハードロックが台頭してきて寂しい気持ちになっていたので〝hey now, hey now〟がキャッチーな良質POPs に「待ってました!」と歓喜した記憶がw
 実際この曲がリリースされた1986年は新しいバンドが次々とヒットして、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン終焉の年だとか。最後の花火?(泣)  実感としては1988年までは・・・と思うので、80年代後半の曲もたくさん登場させたいと思ってます!
Music Video
Crowded House - Don't Dream It's Over
 

 

その他のアーティストも登場!

No.5-012 Don't Be Scared

「急に連絡よこしてスタジオ貸せって、お陰で予約してたバンドに『機械の調子が悪い』とか何とか誤魔化して、キャンセルさせる羽目になったんだぞ⁉︎」

「サンキュー、ライリー! 分かってんじゃん」

「このクソガキが! 変わらず元気そうじゃねぇか」

スタジオ・オーナーのライリーと
マークが、お互い叩き合いながら
抱擁を交わしているのを
バイトを無断欠勤となってしまった
僕は、バツの悪い思いで眺めていた。

するとライリーが

「おめーはよく、警官ボビーの言いなりにならなかったな? 思いのほか気骨があるじゃねーか! 見直しだぞ、頑張ったな」

そう笑いながら大きな手で
僕の頭を揺らした。

恥ずかしさと嬉しさで
目頭が熱くなり俯いていると
マークもガシッと肩を掴んで
揺らしてきた。痛いよ!

そこへ学校に行っていたフレッドが
僕の分のギターも抱えて到着すると、
「マーク!」って勢いよく
彼に飛び付いたんだ。


ちょっ、何それ⁉︎


兄ちゃん、軽く嫉妬なんだけど⁉︎
シャバに出て来たばかりの兄ちゃんが
ここにいるんだけど! って
拗ねる僕を他所に、2人は
チャールズがプロデュースした
音源を聴いたり
アルバムに入れる予定の曲や
新曲のアイディアを語り出した。

あんなに嬉しそうな弟を見たら
何も言えないな。

僕もトニィと音を鳴らしたり
ヴォイストレーニングをしていると

「悪い、遅くなった」

制服姿のヤスも登場。
着替えもせず、息せき切って
急いで来たんだね。

「ようヤス! なんかデカくなってねーか?」
マークが驚きながら
ヤスの頭をグイッと撫でる。

「多分、去年より3インチぐらい伸びてる」

そう言われると確かに。
日頃、見慣れているせいか
気付かなかった。

「ちょっとヤス! 日本人って小さいんでしょ? 僕より大きくならないでよね⁉︎」

「フレッド、身長で適わなくなったら、筋肉で勝負すりゃいいさ」

そう笑って、ご自慢のタトゥーに
力こぶを作るマーク。
今更だけど
なんでアメコミ・ヒーロー?

「なんでって、最高にクールじゃんか!」

マークとトニィは
〝何言ってんだ?〟って感じで
呆れて僕を見る。

やっぱり、ビッグ・カントリーに
徒労を組まれちゃ適わない!

始めから読む(No.5-001)

 

 アメリカ人のトニィは「コップ」、イギリス人のライリーは「ボビー」と呼ぶ警察官。ライリーも若い頃、色々お世話になったみたいw 彼はジェムをお坊ちゃんと見てたしジェムの方もNo.3-015 のようだったので、これを切っ掛けに打ち解けたかと。その様子は10章で。
 そして、久々に登場のマークは変わらずお調子者ですが、そんな彼もロンドンに戻って来たら壁にぶち当たります。その様子は9章で(ΦωΦ)フフ

No.5-011 Don't Be Scared

feat. Big Country

「仕方ねーだろ」

マークはビッグバーガーを頬張った。

『シャバの旨い飯でも食いに行こうぜ! 社会人のオレちゃんが、奢ってやるよ』

そうドヤ顔で言われて入った店は
世界中どこでも安定供給の
ファストフード……美味い飯?

「フィッシュ&チップスより断然、旨いだろうが⁉︎」

「やっぱハンバーガーは、最高のご馳走だよな!」

アメリカ(トニィ)と
カナダ(マーク)の
2大『ビッグ・カントリー』に
徒労を組まれちゃ適わないよ?

[Big Country『In a Big Country』Released:20 May 1983]

 


でも、2人と一緒に食べれば
不思議とご馳走になる。


「ウォルターは明日退院して、そのままカナダに連れて帰る」

マーク曰く、ウォルターのビザは
とっくに切れていたし
以前、医療施設で働いていた
マークの母が、伝を使って
薬物更生施設への入所を
整えているそうだ。

 

僕とトニィは、この8ヶ月間の経緯――
最悪だった最初のプロデューサー、
レコーディングが始まろうとした矢先
レーベルの内部抗争に
巻き込まれたこと、

そして
デビューを待たされていることを
堰を切ったように、話して聞かせた。

マークの方も、父親の会社で
働き始めた様子を語ってくれた。

〝なまっちょろい坊ちゃん〟と
海の荒くれジイさんや
あんちゃん達に鍛えられ

「お陰で、すっかり逞しくなった」

そう言って左袖をまくると
間延びしてるコウモリが現れ、
僕とトニィは大爆笑!

「まあ、海は悪くない。ずっとあの環境で育ってきたんだし、愛着はある。でも――」

ズズーっとコーラを飲み干し、
マークは続けた。 

「でも年内か、来年早々には戻ってくる」

「マジで⁉︎」
僕とトニィの顔が輝いた。

「オレはウォルターの意志を受け継ぐ。オレがあの時、カナダに帰らなきゃ……」

マークの表情に
悔しさが滲み出ていた。

でも逆に
君がウォルターと一緒に捕らわれて、
ドラッグの餌食にならなくて良かったよ?

「オレがそんな、チョロいわけないだろう⁉︎」

マークは明るく笑い飛ばし

「頑固オヤジは杖で歩けるほど回復したし、弟の体調も成長したからか思ったより良好だった。会社の方も姉貴を中心に、古株のジイさんやスタッフ達が頼りになるから、なんとかなりそうなんだ。それに――」

煙草の煙をフーッと勢いよく吐いて

「それに、一つ手を打ってある」

と意味ありげな視線を向けた。
僕の好奇心がうずく。

「どういうこと?」

「それは、上手くいったら報告する」

そして

「そろそろ出ようぜ、時間がもったいない」

マークに連れられて到着したのは
僕のバイト先、ブリッジ・スタジオ。

 

始めから読む(No.5-001)

 

 ビッグカントリーのデビュー・アルバムからのシングル『インナ・ビッグ・カントリー』は、バグパイプ風のギターの音色が彼らの故郷スコットランドを彷彿とさせる、1983年のヒット曲。アルバムもイギリスに続き、アメリカ・カナダでも100万枚以上売り上げたのは、2大大国の人々も郷愁を感じる楽曲だったのかもしれませんね。
Music Video
Big Country - In A Big Country
 そしてマークの打った手がどうなったかは、9章で分かります! あと間延びしてない〝コウモリ〟はコチラですw
 

 

その他のアーティストも登場!

No.5-010 Don't Be Scared

pick out: EastEnders

「僕は無実だ」
もう、説明する気も起きない。

「普段フラフラしてるから、こういう目に遭うのよ! 警察沙汰になるなんて――」

ほら見ろ、息子が無実かどうかなんて
どうでもいいんだ。
親の顔に泥を塗られたことに御立腹で
口角泡を飛ばしている。

「聞いてるのジェームス!? フレッドにまで怪我させて! Aレベル[大学入学資格試験]前の大事な時期でしょう⁉︎」

それに関しては
深く反省している。

「少し落ち着きなさい」

ステイシーをなだめるミスターに
疑問を投げた。

「2人とも、ニューヨークに居たはずじゃ?」

「ああ、深夜の便で帰って来た。フレッドから大体の話は聞いている。確かに君は無実だろうがそれが証明されるまで、どのぐらい時間を取られるか分からない。ここは一旦、罪を認めなさい。私が直ぐ保釈金を支払おう。彼は優秀な弁護士だし大丈夫だ、全て我々に任せなさい」


冗談じゃない!


ドラッグを売ったことなんて
一度だって無いのに
なぜ罪を認めなければならないんだ⁉︎
さっさと厄介払いしたい
魂胆だろうけど、
ミスターに仮を作るなんて御免だ!

僕は〈ピュー♩〉と口笛を吹いた。

「一度ブタ箱に入って見たかったんだよね、ハクが付くし⁉︎」

「なに馬鹿なこと言ってるの!」
怒鳴るステイシー 。
もう最悪だ。

ミスターは軽く溜め息を吐くと

「……ジェームス、明日また彼が連絡するから、一晩じっくり考えなさい。君なら何が最善の状態といえるのか、理解できるはずだ」

そう言い残し、
ステイシーと弁護士を連れて
去って行った。

こんな悔しい思いをするなんて!
心底、自分の運命を呪った。

◇ ◇ ◇

そして、釈放された僕の目の前には
懐かしい顔があった。

「よう、ジェム! ブタ箱の飯は旨かったか?」

トニィに連れられたマークが
変わらぬ笑顔で、出迎えてくれたんだ!

久し振りのマークに嬉しさの反面、
こんな情けない姿を知られて
顔から火が出る思いだった。

 

捜査の結果、あの男は捕らえられ
僕が彼の仲間ではないと分かり、
無事釈放されたんだ。

結局ジョージには面倒をかけてしまい
後日改めて、お詫びと感謝を伝えると

「むしろ君達のお陰で、セント・ブライアンズが救われて喜ばしいよ」
と笑ってくれた。

だけど下っ端ひとり捕まったところで、
ウォルターを地獄に突き落とした奴等は
闇の中であることに変わりない。

結果的に、セント・ブライアンズは
閉鎖されることとなった。
ゆくゆくは、あのエリアも
再開発の手が伸び
完全に消え失せてしまうだろう。

始めから読む(No.5-001)

 

 セント・ブライアンズのあるイースト・エンドはロンドン東部の総称。切り裂きジャックで有名な昔から物騒な辺りや、今では高層ビルが建ち並ぶカナリー・ワーフ等、けっこう範囲が広いなと地図を作ってみて把握。
 BBCで1985年から続く御長寿TVドラマ『イーストエンダーズ』も、このエリアの架空の街が舞台。下は放映当初のオープニングなので、まだ開発が進んでない頃かと(よく見えないどw)

EastEnders original theme tune and opening credits - BBC
 ジェムに前科が付かなくて良かったですが、勾留って結構おおごとでは・・・? サラッと書いて誤魔化したけど日本の刑事手続きも分かってないのに(ドラマも見ないw)80年代イギリスの訴追なんて何か間違ってるかも(汗) それこそ『イーストエンダーズ』が参考になりそうだけど、YouTubeで第1回目を見るも英語が分からず終了〜 (^^ゞ

No.5-009 Don't Be Scared

feat. Tears for Fears

「動くな! 全員止まれ!」

心配したジョージが、警官を連れて
様子を見に来てくれたんだ。

男は裏口から逃げ去り
僕はヤスが伸ばした手を掴むと
必死に叫んだ。

「病院に早く! フレッドが――」

◇ ◇ ◇

それから1時間、
僕は取調室でイラつきを
抑えられずにいた。

「だから、何度説明すれば分かるんですか⁉︎」

「あれはジェムの物じゃない。あの場に落ちてたのを拾っただけだ!」

ヤスの必死の説明も
真面目なロンドンのお巡りさんは
聞いてくれなかった。

あのとき拾ったドラッグの
小袋を持っていたせいで、
疑いをかけられてしまったんだ。

もちろん、僕がドラッグを
やっていないことは
検査で直ぐに証明された。

だけどセント・ブライアンズは
ドラッグの闇取引をしていた場所に
成り下がっていたんだ。

あの場にいたドラッグ中毒者は
検挙されたらしいけど
逃げた男は捕まらず、
僕はドラッグの売人ではないと
証明されるまで
被疑者として勾留されることに
なってしまったんだ。

ドラッグは常習者よりも
売人の方が罪は重い。
こんなこと、とても信じられないよ!

駆け付けてくれたトニィも
憤怒している。

「クソっ! オレが一緒だったら奴を取っ捕まえて、警官コップに突き出してやったのに!」

「俺があの時、あんな物を拾わなければ――」

「気にするなヤス。あんな物を持ったままの僕が迂闊だったんだ。でも無実なんだから、直ぐ証明されるはずだよ。それよりフレッドは? 腕の怪我は……?」

ジョージに付き添われて
病院に行ったフレッドは、
僕のお下がりのレザーコートを
着ていたお陰で、幸いにも
大事には至らなかったようだ。

それを知って安堵すると
冷たく暗い部屋へ、連れて行かれた。

◇ ◇ ◇

 

 〜 叫べ、叫べ、全てをぶちまけろ それは無くても困らないものばかりだ さあ、オレはお前に言ってるんだ さあ!

Tears for Fears『Shout』Released:19 November 1984
 

 

「なに呑気に歌ってるの ‼︎」

翌日、ステイシーとミスターが
弁護士と共にやって来た。
ステイシーは相当おかんむりだ。

「まったくお前って子は! ドラッグに手を出すなんて、バカな真似をしてくれて!」

始めから読む(No.5-001)

 

 ティアーズ・フォー・フィアーズのご登場\(^o^)/ 『シャウト』『ルール・ザ・ワールド』(1985) と立て続けにヒットを飛ばして期待の大型新人かと思ってたけど、既にセカンドアルバムからのシングルでした!
『シャウト』はメンバーの2人が体験した、プライマル・セラピーという「幼少期のトラウマや抑圧された感情を解放するため、叫んだり泣いたりする心理療法」に着想を得たとか。
 ジェムも折り合いの悪い母と義父の登場で、叫びたい心境かなと・・・
 

 

その他のアーティストも登場!

No.5-008 Don't Be Scared

pick out: Bronski Beat

僕等はセント・ブライアンズの
1階入り口までやって来た。

店の看板は外されていたけど
外側からは、何ら変わった様子は
見受けられない。

扉に鍵は掛かってなかったので
ゆっくり寂れた暗い階段を下り
地下入口のドアを開けると、
甘い異臭を感じた。

元々ライブハウスやクラブでは
アルコールや煙草と同じように
マリファナ程度のドラッグは
珍しいものではないけれど、
今のこの状況は
そんな類の物だけではないと
容易に察せた。

ぼんやりとしたフットライトを頼りに
そのまま受付、そして
スタッフルームの前を進むも
人の気配は無い。

不意にヤスが足元の感触に気付き
それを拾い上げ、僕に手渡した。

「これ、もしかして――?」

それは小さなビニール袋で
中身は所謂〝白い粉〟だろうと
暗がりでも認識できた。


〈ガタン!〉

何かが倒れる音に驚き
僕は迂闊にもこの時、その小袋を
ポケットに入れてしまったんだ。

そして角を曲がり
恐る恐る場内に入ると
思わず鼻をつまむ程の悪臭が!

奥にあるステージの
わずかな明かりに目がなれてくると
悪夢のような排他的な光景が
目前に広がった。

ゴミやアルコールの残骸に混じり
注射器やスプーン、ライター等
ドラッグに使う小物が散乱。
遠くにうずくまり
倒れている人も見えて
僕等は立ち竦んだ。

まさか、ここまで酷い
状況になっていたなんて!

「ジェム、もう出よう⁉︎」

フレッドに腕を引っ張られた。
すると

 

「誰だ!?」

 

ステージの袖から
1人の男が現れた。

「お前ら、そこで何してる⁉︎」

暗がりの中、一歩一歩にじり寄り
僕等を確かめようとする男。

「逃げるんだ!」

僕の合図でフレッドとヤスが
走り出す。

「待ちやがれ!」

追いかけようと向かって来た
男を突き飛ばし、叫んだ。

「早く行け!」

その時、背後から
ナイフが襲ってきた。

 

「危ない !!」

 

フレッドの叫び声が響く。
僕を庇った腕を
切り付けられたんだ!

瞬時に
〝ギターが弾けなくなる〟
と焦り、怒りを覚えた。

ヤスが振り返り
足を向けたので怒鳴った。

「来るな! 行くんだ!」

僕はそこら中のものを投げ倒し
男に激しく抵抗するも
負傷したフレッドを
庇いながらでは
とても太刀打ちできない。

力を振り絞り
地上を目指して突き進むと
突然、眩しい光が届いた。

始めから読む(No.5-001)

 

 ジミー・サマービル(後のコミュナーズ)のファルセット・ボイスで繰り返される〝ランナウェイ〟が物悲しさを感じさせる、ブロンスキー・ビートの『スモールタウン・ボーイ』(1984)。歌詞は「ゲイの少年が家族に理解されない悲しみを胸に、生まれ故郷を後にする」といったジミーの半自伝的な内容なので、物語とは関連ナシw
 自分的には〝ランナウェイ〟って言ったら、ボンジョヴィかシャネルズ(ラッツ&スター)なんですけどね (^^ゞ
Music Video
Bronski Beat - Smalltown Boy
 

 

その他のアーティストも登場!

No.5-007 Don't Be Scared

feat. The Stranglers

「君達こそ希望の光だ。君達なら世界を手に入れることができると、そう信じている――」

そのままウォルターは
静かな寝息を立てた。

 

僕等はそっと病室を後にすると
ドクターが待ち受けていた。

「彼は警察が保護してきたんだ。失礼だが君達とは、どういう関係だろうか? 家族の方と連絡を取りたいんだが――」

僕は皆んなと視線を合わせると、
躊躇いつつ答えた。

「僕等は、彼のライブハウスでお世話になってました。最近は店に行ってなかったから、彼がこんな状態だなんて知らなかったんです」

「ウォルターがジャンキーだなんて、信じられない!」

「ドラッグに溺れるような人じゃ、ないと思ってた……」

項垂れる僕等に
ドクターは話してくれた。

「彼の場合、日頃の状況はともかく今回の原因は、急性ヘロイン中毒だ」

ジョージが眉をひそめる。

「『ゴールデン・ブラウン』か……あの店に、そんな厄介なものが出回ってたなんて」

[The Stranglers『Golden Brown』Released: 11 January 1982 (UK)]

 



私見だが恐らくもっと高純度で、その扱いに手慣れた何者かに襲われた可能性が高い」

しかしヘロインが最も恐ろしいのは
中毒性が非常に高く、
依存性も早いということだ。
一度その味を知ってしまったら
その激しい禁断症状から
逃れられなくなる――

「彼には気の毒なことだが」

ドクターは残念そうに
説明してくれた。

僕等はドクターに
後でカナダの連絡先を教える
と告げ、病院を後にした。
マークもどんなに
ショックを受けるだろう……

 

「今からセント・ブライアンズに行って、様子を見てくる」

病院を出た先で
そうジョージに伝えると
彼は僕の肩を捉え、首を横に振った。

「やめた方がいい。ウォルターがどういう状況で運ばれたのか、警察がどこまで把握しているのか、分かってないだろう?」

「だからこそ、何も知らないからこそ、知っておきたいんだ」

ウォルターには
あんなに世話になったのに、
このままじゃマークに
何も説明できない。

「僕達3人もいるし、取り敢えず様子を見るだけだから大丈夫だよ。ね、ヤス?」

フレッドの言葉にヤスも頷く。
2人もウォルターの変わり果てた姿に
怒りを覚えているようだ。

ジョージには
トニィから連絡が来たら
ウォルターの件を伝えて欲しいと頼み
彼と別れた。
パパになったジョージに
これ以上、面倒はかけられない。

だから僕が
セント・ブライアンズの現状を
把握しなければ――

始めから読む(No.5-001)

 

 60〜70年代はドラッグにまつわる楽曲がポロポロあるんですけど(ビートルズは有名ですよね)1982年にリリースされたストラングラーズの『ゴールデン・ブラウン』も、黄金色の肌の魅力的な女性に抗えないと言った体で、ヘロイン中毒を暗示してるとか。ノスタルジーハープシコードの音色と不規則なリズムが織りなす幻想的な雰囲気が、どこか哀愁を感じさせる彼らの代表曲となってます・・・が、
 ドラッグ、ダメ、絶対!( ー̀дー́ )!
Music Video
The Stranglers - Golden Brown
 

 

その他のアーティストも登場!

No.5-006 Don't Be Scared

「だけど、売った相手が悪かった」

溜め息を吐き
ジョージは続けた。


セント・ブライアンズを奪ったのは
表向きは再開発で暴利を目論む
不動産業者だったが、
その実バックに付いているのは
ある闇組織のシンジケートだと
噂されている。

ウォルターはセント・ブライアンズを
最後まで守ろうとしていたけど
度重なる営業妨害に
客も出演者も離れてしまい
抵抗虚しく、彼等のいいように
扱われているという。

「オレは音楽から離れてしまったし、もう駅の向こう側に行くこともないから、この目で確かめたわけじゃないが……」

とても信じられない話だった。
ウォルターは、今どうしているのか?
なぜ連絡が付かないのか?

僕等の気を察したジョージが
「今度パブで常連達に会ったら、ウォルターのこと聞いてみるよ」
と連絡先を交換してくれた。

僕はバイトの時間が迫っていたので
ジョージとアンに礼を言い、
ひと先ずトニィと一緒に
イースト・エンドを後にした。

◇ ◇ ◇

ジョージの話は、直ぐ
フレッドとヤスにも伝えた。
とてもライブどころでは
なくなってしまった。

ウォルターのことが気になりつつも
イースター休暇も終わり、
なんの手立ても思いつかないまま
日常が過ぎていった。

そして、また冬に戻ったような
冷たい北風が身にしみた
あの日――

 

「それ……本当か?」

呆然となる僕とヤスを
フレッドがせっついた。

「ジョージが電話をくれたんだ。とにかく病院に行こう!」

 

家を飛び出し病院に着くと、
入り口でジョージが待っていてくれた。

「トニィには連絡が付かなくて、フラットメイトの女性に伝言を頼んでおいた」

僕等は受付で面会を申し出るも
面会謝絶だと言われ困っていると、
丁度タイミングよく
担当だという若い医師が通りがかり
声を掛けてくれた。

「今は薬が効いて落ち着いている。あまり時間は与えられないが――」

医師がドアを開くとそこには
別人のようになってしまった彼が居て、
その姿を見ても
にわかには信じられなかった。


ウォルターがドラッグ中毒で
入院するなんて!

「……ああ、とうとう君達に知られてしまったか。こんな恥ずかしい姿を、見せたくはなかったよ」

そう弱々しく話すウォルターに
皆んな言葉も無く、ただ強く
彼の手を握りしめた。
あちこち怪我の手当ても
されていて、とても痛々しい。

「君達のデビューアルバムは、もうできたのかい? プロモーションで忙しいだろうに、わざわざ来てくれるなんて申し訳ない……」

そして、遠い目をして呟いた。

始めから読む(No.5-001)

 

 昔は規制が緩かったのか、ロックな界隈にドラッグは付き物な印象が。常にプレッシャーに晒されるアーティスト達は、餌食になりやすいんでしょうね?
 自分的には『トレインスポッティング』を観ても胸糞でしかなかったので、愛する息子達がドラッグの恐ろしさを実感するよう、大人に犠牲になってもらいました。ごめんね、ウォルター(>人<;)