1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.4-028 Lost The Way

feat. The Cure

ゲートに向かって歩き出した2人に
フレッドは手を振りながら
ほっこりとして呟いた。

「なんだかルイス、綺麗になったみたい。穏やかで満たされてる感じ……? きっと好きな人と一緒にいるからだね」

「欲求不満、解消されただけだろ」

鼻で笑うヤスの前に
不意にルイスが踵を返して
舞い戻って来た。
ギクッとなる一同。

ルイスはヤスの正面で立ち止まると

「今度会う時までに、少しはレディへの接し方を学んでおきなさいね?」

そう言って、ヤスの頬に
キスしたんだ!

「それはあんたの方が、先ずレディにならないと――痛っ!」

ヤスの腕を軽く小突いて
ルイスはクスクス笑いながら
トニィの後ろに隠れた。

「どこがレディだよ」って
クールを装っていたヤスだけど
ちょっと伸びてきた黒髪から覗く
耳タブが赤くなっているのを
僕は見逃さないからね!?

そして、トニィとルイスは
仲良くロンドンを後にした――

 

 

「どうだった、ルイスと一緒に過ごしてみて? 彼女と少しは仲良くなれた⁉︎」

帰りの車の中で
バックミラーに映るヤスに、
ちょっと意地悪く訊いてみた。

「ほんっと恨むぞジェム! 母さんが、あんなに女の子好きだなんて知らなかった。すっかりルイス贔屓なんだ。あの女、俺と母さんの前じゃ180度、態度が違うんだ」

むくれているヤスに
僕とフレッドは大笑い。

「笑い事じゃないって! この間だって俺は、スヌーカーのダブルス選手権を楽しみにしてたのに、あいつがドラマ見るってテレビ独占しやがって、多数決だって言ってね! 俺の言うことなんか聞きやしない」

※Snooker:ビリヤードの一形態。イギリスでは人気が高く、テレビ中継も盛んに行われている。

 

そんなヤスにフレッドは

「でもね? トニィの話じゃ、あれでルイスはヤスのこと、けっこう気に入ったみたいだって。彼女は末っ子だから、弟分ができて楽しんでるみたいだって、トニィがヤキモチ焼いてたよ」

と揶揄い口調で応え、
僕もニヤッとして呟いた。

「2人とも案外、相性良いかもしれないな? 残念だなぁ、トニィの彼女じゃなかったらねぇ」

「ヤス、泣かないで? 君にもいつか、素敵な女性ひとが現れるよ」

「そうだよヤス、『男の子は泣かない』って〝ロバート・スミス〟も言ってるしね?」

The Cure『Boys Don't Cry』Released:15 June 1979]

 

「――お前ら、いい加減にしろ!!」

 

 

★      ★      ★

 

 

「日本公演の次は、いよいよ全米横断だ! ルイスもさ、全英No.1のお祝いしようって、言ってくれてるんだ」

移動のバスの中
トニィは終始ご機嫌だ。

始めから読む(No.4-001)

 

 キュアーというとロバスミ氏のキャラに目がいってしまい曲は詳しくないのですが、ロマンチックなギターのイントロ後に突然ショミショミショ〜ミ〜と気の抜ける歌声で始まる『Just Like Heaven』(1987) がお気に入りw でも内容的に『ボーイズ・ドント・クライ』の方を。子供ロバスミ、可愛い♩
Music Video
The Cure - Boys Don't Cry
 まぁヤスは泣くどころか安堵してるだろうけど、この2人の犬猿の仲は9章に続きます。ルイスが絡むとロクなことにならない、難儀なヤス・・・(ΦωΦ)フフフ
 

 

その他のアーティストも登場!

No.4-027 Lost The Way

「泊めるならジェムんの方が、広くて余ってる部屋あんだろ⁉︎」

そう、ルイスはヤスの家で
世話になることになったんだ。

「だって僕の家は基本フレッドと僕の男2人だけだから、いつ始まっちゃってもおかしくな――痛っ!」

僕の下品な冗談に
トニィの鉄拳が飛んだ。
彼は僕を押し退け
ヤスの両手をガッシリ握ると
大きく上下に振り出した。

「すまないなぁ、ヤス。君の家なら超〜安心さ!」

「あ〜らヤスアキ、私が居たら迷惑かしら?」
ルイスが横目でヤスを見る。

「恭章、何してるの⁉︎ 寒いんだから、早くリビングに上がってもらって?」
奥からユミコの声がして
仕方なくルイスを手招きするヤス。

そんな2人を見て、ほくそ笑んでいたら
フレッドが冷めた目で言い放った。

「ほーんと兄ちゃんって、陰険だよね」

◇ ◇ ◇

数日後、メンバーは再び
マネージメント・オフィスに集まった。
しかし、スティーブンの表情は固い。

「せっかく来てもらったのに、良い話ではないんだ。君達のデビューが延期になった」

「まさか! 何故ですか⁉︎」

ティーブンは
言いにくそうに話し出した。

「恐れていた事態が起こった。ノーマンレーベルの内部争いを嗅ぎつけた界隈から、圧力が掛かり始めたらしい。どうも内部に、不正が働いているようなんだ」

本社と支社で、いがみ合ってる
場合じゃない事態に追い込まれた
ノーマンレーベルは、
組織の一体化を図ることが
急務となった。

そのため、先に本社が手掛けた
グループのプロモーションに
力を入れることになったそうだ。

「私もレッドも君達を、中途半端に売ることだけは避けたいんだ。君達のデビューはプロモーションに注力できるタイミングを見計らい、戦略を見直す方向で進めることになった」

皆んな落胆の色を隠せなかったけど
ここは一旦落ち着いて
仕切り直そうと頷きあった。

 

そんなわけで、取り敢えずトニィは
ルイスと一緒にLAに向かい、
そのままクリスマス・ホリデーを
家族と過ごすそうだ。

僕等は2人を見送りに
空港まで来ていた。
そろそろ時間だと、立ち上がるトニィ。

「じゃあ暫く家族の元で、のんびりしてくるよ。何か動きがあったら連絡してくれ」

「皆んな、色々ありがとう。また会いましょうね」

そう言って手を振るルイスは
トニィと一緒に帰れるのが
嬉しそうだ。

始めから読む(No.4-001)

 

 母もDKな年頃のムスッとした息子より、若いお嬢さんとガールズ・トークする方が楽しそうw ルイスも部屋着に素っぴんと遠慮なく寛いでいて、居心地良さそうだなと(´∀`)
 で、ルイスのスウェット柄を80sっぽくしてみたけど・・・ピンク大好きルイス、ルックスは良いけどファッションセンスはイマイチって設定も面白いかも⁉︎
ちなみに某ジョニーさんの映画初出演作は、1984年『エルム街の悪夢』。TVドラマでブレイクする前のこの時期、こんな風に噂になってたかも?って妄想ですw

No.4-026 Lost The Way

feat. Deniece Williams

甘くキスを交わす2人に
いつの間に集まっていたのか
ギャラリーが〈ヒューヒュー♩〉と
口笛を鳴らし、拍手を送っていた。

誰かが

男の子に声援を送ってあげて!

[Deniece Williams『Let’s Hear It For The Boy』Released:February 14, 1984

 

と大きな声を出すと
口々に2人に応援の声がかかり
一斉に歌い出したんだ!

そういえば、このホテル
アメリカ人観光客の御用達だっけ。
そりゃ『フットルース』で
盛り上がるわけだ。

その様子に背中を押されたのか
ルイスは恥じらいながら
トニィの耳元で囁いた。

「今日こそ、部屋まで送ってくれるわよね?」

彼女にここまで言われちゃ
もう逃げられないよ、トニィ⁉︎

僕とフレッドとヤスは
真っ赤になっているトニィの背中を
順番に(思いっ切り!)叩いて
その場を後にした。

 

まあ男って、好きな子の前だと
格好つけたくなるし
自分が理想とする男で有りたいと
思っちゃうんだよね。
女の子からすれば、バカバカしく
見えるかも知れないけど。

でもトニィとルイスは、お互いに
また理解を深められたんだ。
せっかく仲直りしたのに
このままルイスが帰っちゃうのは
もったいないよね?


そこで、僕に名案が浮かんだ。

◇ ◇ ◇

「なんで! どういうこと⁉︎」

翌日、想像通り驚くヤスの顔が
そこにあった。

「まあ、いらっしゃい。どうぞ中に入って。恭章、突っ立ってないで、荷物をゲストルームまで運んであげて?」

ユミコの爽やかな笑顔に

「ありがとうございます」
とルイスも、安堵の笑顔を見せた。

「どうしてこうなるんだよ、ジェム!」

僕はルイスの
パステルピンクのスーツケースを
ヤスに手渡しながら答えた。

「事情を話したら、ユミコが快く引き受けてくれたんだよ」

始めから読む(No.4-001)

 

 1984年のアメリカ映画『フットルース』のサウンドトラックは、知らない曲は無いくらいヒット曲の目白押し! UK縛りならウェールズ出身、ボニー・タイラーの『ヒーロー』といきたいところだけど、内容的にデニース・ウィリアムスの『レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ』となりました。
 前回ルイスが「あなたはロミオじゃないけど云々」と言ってたのは、この曲から拝借。アメリカ娘のルイスには、キュートなガールズPOPがピッタリ(´∀`)
Music Video
Deniece Williams - Let’s Hear It For The Boy
 

 

その他のアーティストも登場!

No.4-025 Lost The Way

feat. Eighth Wonder

「でも、デビューがどうなるか分からないし……」

トニィはルイスを抱き寄せるも
一人前になる見通しが立たないのに
軽はずみなことはできないと、頑なだ。

それに関しては
僕も気が気じゃなくて
気休めも言えずにいたけれど。

「オレが待たせてる間に、君に相応しい人が現れたら――」

「相応しいって、何⁉︎」

ルイスは鋭い視線を送った。

「だったら私の方こそ、バンドマンの彼女として失格よね? 音楽の事なんか全然わかんないし、嫉妬深いし我慢も足りない。トニィの彼女に相応しくないでしょ!?」

「そんなこと、関係ないよ!」

「そうよ、関係ないのよ!」

ピシャリと言い放つと
ルイスは僕等に訴え出した。

「この人、口下手で甘い囁きもしてくれないし、服もいつもTシャツ&デニムで洒落っ気も無し。とてもロミオのような王子様とはいえないけど、でもそんなこと全然気にならない私って変?」

もちろん「変じゃないよ」って
僕とフレッドに、笑みがこぼれた。
(ヤスは呆れてたけどね)

ルイスも、はにかみの
笑顔を見せた。

「私ね、トニィの側にいると幸せなの。トニィと一緒にいる時の自分が大好きなの。他の男の子の前じゃ、こんな風になれない……トニィを選んだ理由が、それだけじゃ不満?」

トニィは彼女の手を取り
首を大きく横に振ると
躊躇いがちに頭を下げた。

「ごめん……オレ自信なかった、臆病だった。君が不安になるなんて、思いもしなかった」

「だったら『私と一緒にいて』よ。私はずっと此処にいるわけじゃない、今しかないの分かるでしょ?」

[Eighth Wonder『Stay With Me』Released:21 March 1986]

 

ルイスは小さく頷くトニィの肩に
手を滑らせ、大きく見上げると
しっかり彼の瞳を捉えた。

「もう逃げないで、ちゃんと私と向き合って! 私は『音楽と私どっちが大事⁉︎』なんて言うような彼女には、なりたくないのよ?」

トニィは勢いよく
彼女を抱き締め
「本当はいつだって、君が欲しくてたまらないんだ」
と力強く唇を奪った。

ルイスは吐息を漏らし
目を潤ませ、笑顔で応えた。

「もう不安に、させないでよね?」

始めから読む(No.4-001)

 

『ステイ・ウィズ・ミー』といえば自分的にはピーター・セテラですが(R.スチュワート、松原みきさんって人も多そう)ここはUK女子推しでエイス・ワンダーのデビュー曲を!
 当時17歳の女優、パッツィー・ケンジット(リアム・ギャラガーの元嫁って方が有名?)のキュートなルックスと歌声でヒットしたけど、英米では話題にならなかったとか。こういう日本独自の売れ筋を「ビッグ・イン・ジャパン」と揶揄されますが、詳細は10章で。
 そんな彼らも2年後の1988年に、ペットショップ・ボーイズに提供された『モンマルトルの森 (I'm Not Scared)』がUKでも7位のヒット曲となりました!
Music Video
Eighth Wonder - Stay With Me
 それにしてもトニィとルイスは、どっちも自分の方が相手を追いかけてると思っている、両片想いの状態ですね。あ〜ハイハイ( ̄▽ ̄)←ヤスの気持ちw
 

 

その他のアーティストも登場!

No.4-024 Lost The Way

feat. Samantha Fox

カクカク揺れる僕を尻目に
フレッドがクスッと笑う。

「大丈夫だと思うよ? ルイスの方も〝その気〟なんじゃないかな!? あのスーツケースの中の高級そうなランジェリー、セクシーなドレスにブランド物の化粧品なんて、気合い十分――」

「見ないでよ⁉︎」

振り向くと、真っ赤な顔した
ルイスが立っていた。

「化粧品は、お姉ちゃんの会社のサンプル品だから」

別に気張ってるわけじゃないと
憤慨するルイスの後ろに
棒立ち状態のヤスもいたのは
驚いた。

安堵のトニィが立ち上がり
「良かった、心配したよ」
とルイスを抱き締める。

そんな2人にフレッドは

「だって、スーツケースをあんな風におっ広げてたら、嫌でも目に入っちゃうよ? でも女の人って、そうやって好きな人のために装うところ、健気だよね……トニィは、それに応えてあげないの?」
と小首をかしげた。

僕の弟はウブだと思ってたのに
なんで女性の気持ちを
代弁できるの⁉︎

「オ、オレは……」
困ったように顔を背けるトニィに

「そうよ! ちゃんと私を見て⁉︎」
ルイスは彼の頬を両手で捉え
グイッと引き寄せた。

「せっかく友達が『鈍感なトニィでも分かりやすく』って選んでくれたコーディネートなのに、古着屋でこんなコート買われちゃ意味ないじゃない!」

コートを脱いで投げ捨てたルイスは
身体の線があらわになった
真っ赤なセーターと
網タイツに黒のミニスカート、
15cm ヒールのブーツで
とってもベタな……いや
セクシーなファッションで
仁王立ちになった。

これは、確かに他の男の視線から
隠したくなるトニィの気持ちは
分かるよ?
なんて目のやり場に困っていると

「ルイス、カッコいいよ!」って
フレッドが囃し立て、
ギョッとなる僕とヤス。

セクシーファッションに動じないなんて
弟は一体何者なんだ!?
(ゲイじゃないよね?)

ドヤ顔のルイスだったけど
軽く溜め息を吐いた。

「トニィが私を大切にしてくれてるのは分かってる。でも離れているのは寂しいし不安なのよ? せめて一緒にいる時ぐらいトニィを感じたいのに……やっぱり私って家族みたいな感じ? 女として魅力ない!?」

そんなわけ無い! と
勢いよく首を横に振るトニィに

「だったら『私に触れて』よ? あなたの鼓動を感じたいの」

[Samantha Fox『Touch Me (I Want Your Body)』Released:7 July 1986]


ルイスは両腕を広げた。

始めから読む(No.4-001)

 

 ヤスも動じてしまったルイスの磨き上げた谷間と太ももは、No.4-022でお披露目しております(ΦωΦ)✴︎
 ここから三連続でルイスの気持ちに沿う、女性シンガーの曲をご紹介。先ずはサマンサ・フォックス! 邦題は『タッチ・ミー』だけど、英語タイトルには「あなたのカラダが欲しい」とストレートに入ってますね、Wow♡ サマンサは155cmと小柄だけどセクシー系出身。ルイスも同じぐらい小さい設定なので、ちょっと親近感?w
 そしてフレッドが女心に理解ある理由は、彼の生い立ち7章にて〜
Music Video
Samantha Fox - Touch Me (I Want Your Body)
 

 

その他のアーティストも登場!

No.4-023 Lost The Way

僕等の方は
フレッドが買ってきてくれた
ドリンクを飲みながら
ホテルのロビーのソファに
埋もれていた。

トニィの隣に座った僕は
彼の様子をうかがいつつ、訊いてみた。

「昨日のトニィは、トニィらしくなかった。ルイスの前では、いつもあんな調子?」

「……どうしていいか、分からないんだ」

彼は項垂れ頭を抱えるも
身を起こして、話し出した。

「ルイスとは同い年で家も隣同士だから、いつも一緒に遊んでいたよ。彼女は面倒見が良くてああいう性格だから、オレは怒られてばかりいたけどね。愛らしい彼女は近所でも人気者で、オレも一緒にいるのは嬉しかった。でも、いつからだろう」

顔を曇らせ
溜め息を吐くと

「ルイスはとても綺麗になっていて、それに頭も良くて友達もたくさんいて……そんな彼女が眩しすぎて、なんだか急に近寄り難くなったんだ」

自分は音楽やバスケに夢中で
勉強はからっきしだし、
ルイスの友達と自分の仲間じゃ
タイプも全然違っていたので
次第に疎遠になったと言う。

「気付けばルイスにBFができてて……相手は当然、学校一のモテ男だ。オレはそこで彼女に、幼馴染み以上の気持ちがあることを自覚したんだ。自覚したところで、もう遅いと思ったけど――」

トニィの表情が
わずかに明るくなる。

「でもプロムの時、ルイスのBFが他の女といたから問い質したら、そいつルイスに振られたって言うんだよ⁉︎ 急いでルイスの家に駆けつけると、彼女はオレを待っていてくれたんだ」

眩しそうに話すトニィを見てると
羨ましくなるよ。
なのに、また項垂れてしまった。

「だけどオレ達、幼馴染みでいた時間が長すぎて……彼女になったルイスに、どう接していいか分からないんだ」

トニィは勢いよく
ドリンクを飲み干し

「だいたい、なんでオレなんだ!? モテ男だけじゃない、他にも優秀でカッコイイ奴なんて沢山いるのに⁉︎ だからルイスがオレを選んだ理由が〝幼馴染の安心感〟だとしたら――」

ガシッと僕の肩を捉え
激しく揺さぶった。

「安心感なんてクソくらえ! ベッドルームに2人切りなんて、自制心保つわけないだろ⁉︎ オレ、ルイスを傷付けたくない、嫌われたくないんだ」

始めから読む(No.4-001)

 

 幼馴染の恋愛物語ちまたに溢れてますが、要約すれば大体こんなパターンかとw プロムと聞いて思い浮かぶ映画『プリティ・イン・ピンク』は、タイトル曲をNo.4-014で紹介したので、ここは『フットルース』で!
 都会から保守的な田舎町に越してきたケヴィン・ベーコン演じるレンが、ダンスとロックを通じて、仲間と大人達に立ち向かう青春物語。サントラからの一曲は、No.4-026で登場します( 'ω' و( و"♪
 

No.4-022 Lost The Way

「と、とにかくLAに帰るんだ! オレ達のことは大丈夫だから」

「なんで⁉︎ こんな時こそ側にいたいのに、どうして分かってくれないの?」

2人のやり取りで察した僕は
思わず口をついて出てしまった。

「もしかして、まだ⁉︎」

もしかすると僕は、トニィより先に
ルイスのヌードを見ちゃったのかも
しれない……(Oh God !)

◇ ◇ ◇

次の日の夕方
慌てた様子のトニィから
電話が掛かってきて、
僕とフレッドはトニィが待つ
ルイスの宿泊先ホテルへ向かった。

ロビーには
「ルイスと、はぐれた」と
青ざめた表情のトニィが
立ち竦んでいた。

昨日のことで、デート中に
話し合っていたら
ルイスが怒って駆け出して行き
雑踏の中に消えてしまったらしい。

「まだホテルには戻ってなくて、変な野郎に絡まれてないか心配で……」

僕はトニィを落ち着かせようと
ソファに座らせ
フレッドはドリンクを買いに
外へ向かった。

 

 

その頃ヤスは、久々に
母ユミコと日本食レストランで
早めの夕飯を終えたところだった。

コヴェント・ガーデンに向かい
歩いていると、目線の先に
足首まであるロングコートをまとい
マフラーと帽子で顔を覆った
防寒対策バッチリなルイスが
独りベンチでぼんやりしているのに
気付いたんだって。

「トニィはどうした?」

ヤスの声に
ゆっくり顔を上げたルイスは
何も言わずにヤスを見つめた。

予想外の反応に戸惑ったヤスは

「やっぱり明日、帰るんだろ? ま、せいぜいロンドンを楽しむんだな」

そう言って逃げるように背を向け
歩き出した途端、彼女が叫んだ。

「行かないでよ! 独りにしないで!」

そんな2人の様子を
遠巻きに眺めていたユミコは、
驚いて固まっている息子の手に
紙幣を握らせると

「ちゃんと家まで、送ってあげなさい?」

そう念押しし、
嬉々として去って行った。

「あれは絶対、誤解してる」

ヤスは困惑するも、仕方なく
ルイスに声を掛けたんだって。

「……取り敢えず、お茶でもどう? 母さんの驕りだけど」

人生で初めてナンパした気分だったと
後にヤスは不貞腐れながら
話してくれた。

始めから読む(No.4-001)

 

 はい、携帯電話の無い時代ですよw あの頃は友達とはぐれたらどうしていたのか、まったく記憶にございません・・・
 それにしてもヤスってば、よくルイスに気付きましたね? でも、お茶に誘ったのは失敗だったと、後悔してるみたい (ノ∀`)



No.4-021 Lost The Way

僕はヤスの頭を、軽く小突いた。

「まさか学校の女の子にも、あんな態度じゃないだろうね? そんなんじゃ彼女できないよ!?」

「あんなウザイ女に比べたら、クラスのお喋りな女子達の方が、まだマシじゃん」

ヤスの奴、鼻で笑ってるよ。

そして勢いよくドアが開き
トニィとルイスが戻って来た。
何か揉めてるみたいだ。

「もう知らない、トニィのバカ!」

「とにかく最初の予定通り、明後日の便で帰るんだ!」

珍しくトニィが大声を出し、
僕は慌てて2人の側に駆け寄った。

「どうしたんだよトニィ、ルイス泣いてるじゃないか⁉︎ ルイス、両親にOKもらえなかった?」

ルイスは首を横に振る。

「ママは理解してくれたわ。でも私、もうお金が……ホテルに泊まり続けるだけのお金が無いの。だから、トニィのフラットに泊めてって言ったんだけど――」

それを聞いたフレッドは
肩を竦めてみせた。

「ああ、それは厳しいね? あのトニィのフラットメイトが、OKするとは思えないもん」

するとトニィは
躊躇いがちに口にした。

「実は彼女……昨日から留守なんだ。1週間ほど出張だって」

「なんだ、だったらいいじゃないか⁉︎ 彼女の部屋にさえ入らなきゃ分かんないよ。どうせ2人、同じベッドでいいんだし」

揶揄うような口調の僕に
トニィは怖い顔を向けた。

「そんなこと、できるわけないだろ⁉︎」

「そうだよジェム、女性の勘は侮れないよ? キッチンだって直ぐ分かっちゃうんだから! 絨毯の髪の毛もよーく掃除しておかないと、バレたらトニィが部屋を追い出されちゃうよ⁉︎」
フレッドが口を尖らせる。

「そういう問題じゃないんだ……」
顔を覆うトニィ。

ルイスは鼻を啜りながら
説明した。

「違うのよ? トニィは私と一緒に住むこと自体、躊躇してるの。場所の問題じゃないの」

僕はルイスの言っている意味が
分からずトニィに目をやると
彼は珍しく焦り出した。

「オ、オレは、君の両親の信頼を裏切るようなことは、したくないんだ」

「パパもママもお姉ちゃん達も、私がわけ分かんない安宿に泊まるぐらいなら、息子同然のトニィと一緒の方が何倍も安心するわよ!」

始めから読む(No.4-001)

 

 ルイスは近所でも評判の、美人3姉妹の末娘。めっちゃ可愛がられ、甘やかされて育ってます! ルイスはママの若い頃に一番そっくりの、美人&ナイスバディらしいですよ〜ということは、将来はママのように・・・?(とはいえママの顔、デカくなりすぎたw)