pick out: Pretty in Pink
「そんなブス、私の方が全然キレイだし、スタイルもいいっつーの!」
鼻息を荒くするルイス。
思わず彼女のヌードが脳裏に浮かび
納得して顔を赤らめる僕の背中を、
フレッドが気の毒そうに
ポンポン叩く。
その様子を見たルイスは
さっきまでの勢いはどこへやら、
躊躇うように呟いた。
「じゃあ、この2人ってことよね⁉︎ トニィがロンドンに留まっている理由は……バンド、デビューするんでしょう?」
「この2人だけじゃないよ⁉︎ 後ヤスと、今はカナダだけどマークもいるし、スゲェいいバンドなんだ!」
トニィは嬉々として言ってるけど
そういうハナシじゃないと思うよ。
「……もうLAに帰らないつもり?」
ルイスの問いかけに
僕とフレッドもギクッとなる。
なのに当の本人は
「そんなことないよ! そりゃあレコーディングとかスケジュール次第だけど。休みが取れたら、ちゃんと帰るよ」
と、まるで分かってない。
フレッドが思わず声を荒げた。
「そういうことじゃ、ないでしょ⁉︎」
信じらんない! そう首を横に振る
フレッドを、なだめる僕。
ルイスも失笑している。
「この人、昔からこうなの。凄いノーテンキで、私は振り回されてばっかり。私が『寂しいから別れたい』って言うとか、微塵も考えないんだから」
「ええっ⁉︎ そ、そうなの……?」
トニィの顔がサーッと青くなる。
「だから、違うって言ってるでしょう⁉︎ 別れるもんですか! ステディになってまだ一年ちょっとなのに、デートだって数えるぐらいしかできてないのに、絶対別れないからね!」
ルイスの台詞に
今度は僕とフレッドが驚いた。
「え、だって2人は幼馴染って、付き合い長いんじゃ――?」
「そうよ、生まれた時からお隣さんよ! でも、この人がようやっと告白してくれたのは、シニア・プロム[高校の卒業パーティー]の時、しかも当日よ⁉︎ ずっと、ずーっと待ってたんだからね! 今だって、ずっと待ってるんだから……」
ルイスは泣きそうな声で
話を続けた。
「私……音楽のこと全然分かんないけど、でも少しでもトニィの目指しているものを知りたくて、こっちでどんな生活してるのかも気になるし……だから早くロンドンに行きたくて、バイトも色々やってシフトもいっぱい入れて、課題のレポートだって急いでまとめたのよ⁉︎ 頑張ったんだから!」
それを聞いて、トニィは
ようやく笑顔になった。
プロムにピンクと聞いて思い浮かぶ映画は『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(1986)。アメリカ映画だけどサウンドトラックが、エコバニ、スミス、ニューオーダーとUK好きにはたまらないラインナップで、OMDの挿入歌も大ヒット! って表題曲の方は・・・⁉︎
映画自体、ザ・サイケデリック・ファーズの1981年の曲「Pretty In Pink」からインスパイアされていて、当然アルバムにも再録されてるけど、なんだかOMDに全てもっていかれたような感が・・・(かっこいいんだけどなぁ)ちなみにOMDの方は、6章(No.6-022)で紹介します٩(。˃ ᵕ ˂ )و♪
The Psychedelic Furs - Pretty in Pink(1986)