feat. Big Country
「仕方ねーだろ」
マークはビッグバーガーを頬張った。
『シャバの旨い飯でも食いに行こうぜ! 社会人のオレちゃんが、奢ってやるよ』
そうドヤ顔で言われて入った店は
世界中どこでも安定供給の
ファストフード……美味い飯?
「フィッシュ&チップスより断然、旨いだろうが⁉︎」
「やっぱハンバーガーは、最高のご馳走だよな!」
アメリカ(トニィ)と
カナダ(マーク)の
2大『ビッグ・カントリー』に
徒労を組まれちゃ適わないよ?
でも、2人と一緒に食べれば
不思議とご馳走になる。
「ウォルターは明日退院して、そのままカナダに連れて帰る」
マーク曰く、ウォルターのビザは
とっくに切れていたし
以前、医療施設で働いていた
マークの母が、伝を使って
薬物更生施設への入所を
整えているそうだ。
僕とトニィは、この8ヶ月間の経緯――
最悪だった最初のプロデューサー、
レコーディングが始まろうとした矢先
レーベルの内部抗争に
巻き込まれたこと、
そして
デビューを待たされていることを
堰を切ったように、話して聞かせた。
マークの方も、父親の会社で
働き始めた様子を語ってくれた。
〝なまっちょろい坊ちゃん〟と
海の荒くれジイさんや
兄ちゃん達に鍛えられ
「お陰で、すっかり逞しくなった」
そう言って左袖をまくると
間延びしてるコウモリが現れ、
僕とトニィは大爆笑!
「まあ、海は悪くない。ずっとあの環境で育ってきたんだし、愛着はある。でも――」
ズズーっとコーラを飲み干し、
マークは続けた。
「でも年内か、来年早々には戻ってくる」
「マジで⁉︎」
僕とトニィの顔が輝いた。
「オレはウォルターの意志を受け継ぐ。オレがあの時、カナダに帰らなきゃ……」
マークの表情に
悔しさが滲み出ていた。
でも逆に
君がウォルターと一緒に捕らわれて、
ドラッグの餌食にならなくて良かったよ?
「オレがそんな、チョロいわけないだろう⁉︎」
マークは明るく笑い飛ばし
「頑固オヤジは杖で歩けるほど回復したし、弟の体調も成長したからか思ったより良好だった。会社の方も姉貴を中心に、古株のジイさんやスタッフ達が頼りになるから、なんとかなりそうなんだ。それに――」
煙草の煙をフーッと勢いよく吐いて
「それに、一つ手を打ってある」
と意味ありげな視線を向けた。
僕の好奇心がうずく。
「どういうこと?」
「それは、上手くいったら報告する」
そして
「そろそろ出ようぜ、時間がもったいない」
マークに連れられて到着したのは
僕のバイト先、ブリッジ・スタジオ。
Big Country - In A Big Country