朝食を食べにレストランに向かう途中
フロントのお姉さんが
トニィを呼び止めた。
「先程ルイス・ミッチェル様から、お電話がございまして――」
「えっ、ルイスから⁉︎ ジェム、キー貸して!」
トニィは慌てて、部屋へ戻って行った。
The Starlight Night の中では
今のところトニィだけが
ステディな彼女持ちなんだ。
信じられる⁉︎ 別に皆んな
モテないわけじゃないのにね!
(多分)
僕はブッフェから
シリアルとコーヒーをセレクトして
「朝からラブ・コールか、羨ましいね」
とボヤキつつ、席に座った。
朝は、あまり入らないんだ。
フレッドは、美しく盛りつけられた
皿を両手に持って
「今、LAは何時だろうね? 時差があるからタイミングが合わないって、トニィが嘆いてたけど」
そう言いながら、サラダと
スクランブル・エッグがのった方を
僕の前に置いた。
……食べなきゃ駄目?
「いいよな~彼女のいる奴は」
マークの皿には、ベーコン・エッグと
ソーセージとポテトしかのってないし。
あと、日本のミソ・スープは
二日酔いに効くと
気に入ったみたいだ。
「長電話にならなきゃいいけど」
「電話代、怖いな〜」
ヤスとアテンドのヤマグチさんは
また豆をネバネバさせてるよ!
寿司に天麩羅と日本食は素晴らしいけど
この豆だけは、理解に苦しむ……
僕等が各々、吟味したメニューを
食べ始めた頃、意外にも早く
トニィは戻って来た。
そして、片っ端から料理をのせて
(選んじゃいない)
山盛りにした皿を抱え、
ドカッと腰をおろした。
もう顔が緩みっぱなし!
「ルイスは元気そう?」
僕の問いかけにYESと頷き
次々と料理を平らげていく。
朝から凄いな。
フレッドが、紅茶を入れたカップを
両手に持って戻ってきて
「でも、トニィ可哀想だよね。普通アーティストって、ツアーに彼女や奥さんを連れて行くんでしょ? 一緒に来てもらえないなんて」
そう言いながら、片方のカップを
僕の前に置いた。
もう彼は、僕の世話を焼くのが
クセになってるな。
本人気付いてないみたいだから
黙っておこう!