feat. Eighth Wonder
「でも、デビューがどうなるか分からないし……」
トニィはルイスを抱き寄せるも
一人前になる見通しが立たないのに
軽はずみなことはできないと、頑なだ。
それに関しては
僕も気が気じゃなくて
気休めも言えずにいたけれど。
「オレが待たせてる間に、君に相応しい人が現れたら――」
「相応しいって、何⁉︎」
ルイスは鋭い視線を送った。
「だったら私の方こそ、バンドマンの彼女として失格よね? 音楽の事なんか全然わかんないし、嫉妬深いし我慢も足りない。トニィの彼女に相応しくないでしょ!?」
「そんなこと、関係ないよ!」
「そうよ、関係ないのよ!」
ピシャリと言い放つと
ルイスは僕等に訴え出した。
「この人、口下手で甘い囁きもしてくれないし、服もいつもTシャツ&デニムで洒落っ気も無し。とてもロミオのような王子様とはいえないけど、でもそんなこと全然気にならない私って変?」
もちろん「変じゃないよ」って
僕とフレッドに、笑みがこぼれた。
(ヤスは呆れてたけどね)
ルイスも、はにかみの
笑顔を見せた。
「私ね、トニィの側にいると幸せなの。トニィと一緒にいる時の自分が大好きなの。他の男の子の前じゃ、こんな風になれない……トニィを選んだ理由が、それだけじゃ不満?」
トニィは彼女の手を取り
首を大きく横に振ると
躊躇いがちに頭を下げた。
「ごめん……オレ自信なかった、臆病だった。君が不安になるなんて、思いもしなかった」
「だったら『私と一緒にいて』よ。私はずっと此処にいるわけじゃない、今しかないの分かるでしょ?」
ルイスは小さく頷くトニィの肩に
手を滑らせ、大きく見上げると
しっかり彼の瞳を捉えた。
「もう逃げないで、ちゃんと私と向き合って! 私は『音楽と私どっちが大事⁉︎』なんて言うような彼女には、なりたくないのよ?」
トニィは勢いよく
彼女を抱き締め
「本当はいつだって、君が欲しくてたまらないんだ」
と力強く唇を奪った。
ルイスは吐息を漏らし
目を潤ませ、笑顔で応えた。
「もう不安に、させないでよね?」
当時17歳の女優、パッツィー・ケンジット(リアム・ギャラガーの元嫁って方が有名?)のキュートなルックスと歌声でヒットしたけど、英米では話題にならなかったとか。こういう日本独自の売れ筋を「ビッグ・イン・ジャパン」と揶揄されますが、詳細は10章で。
そんな彼らも2年後の1988年に、ペットショップ・ボーイズに提供された『モンマルトルの森 (I'm Not Scared)』がUKでも7位のヒット曲となりました!
Eighth Wonder - Stay With Me