feat. The Cure
ゲートに向かって歩き出した2人に
フレッドは手を振りながら
ほっこりとして呟いた。
「なんだかルイス、綺麗になったみたい。穏やかで満たされてる感じ……? きっと好きな人と一緒にいるからだね」
「欲求不満、解消されただけだろ」
鼻で笑うヤスの前に
不意にルイスが踵を返して
舞い戻って来た。
ギクッとなる一同。
ルイスはヤスの正面で立ち止まると
「今度会う時までに、少しはレディへの接し方を学んでおきなさいね?」
そう言って、ヤスの頬に
キスしたんだ!
「それはあんたの方が、先ずレディにならないと――痛っ!」
ヤスの腕を軽く小突いて
ルイスはクスクス笑いながら
トニィの後ろに隠れた。
「どこがレディだよ」って
クールを装っていたヤスだけど
ちょっと伸びてきた黒髪から覗く
耳タブが赤くなっているのを
僕は見逃さないからね!?
そして、トニィとルイスは
仲良くロンドンを後にした――
「どうだった、ルイスと一緒に過ごしてみて? 彼女と少しは仲良くなれた⁉︎」
帰りの車の中で
バックミラーに映るヤスに、
ちょっと意地悪く訊いてみた。
「ほんっと恨むぞジェム! 母さんが、あんなに女の子好きだなんて知らなかった。すっかりルイス贔屓なんだ。あの女、俺と母さんの前じゃ180度、態度が違うんだ」
むくれているヤスに
僕とフレッドは大笑い。
「笑い事じゃないって! この間だって俺は、スヌーカー※のダブルス選手権を楽しみにしてたのに、あいつがドラマ見るってテレビ独占しやがって、多数決だって言ってね! 俺の言うことなんか聞きやしない」
そんなヤスにフレッドは
「でもね? トニィの話じゃ、あれでルイスはヤスのこと、けっこう気に入ったみたいだって。彼女は末っ子だから、弟分ができて楽しんでるみたいだって、トニィがヤキモチ焼いてたよ」
と揶揄い口調で応え、
僕もニヤッとして呟いた。
「2人とも案外、相性良いかもしれないな? 残念だなぁ、トニィの彼女じゃなかったらねぇ」
「ヤス、泣かないで? 君にもいつか、素敵な女性が現れるよ」
「そうだよヤス、『男の子は泣かない』って〝ロバート・スミス〟も言ってるしね?」
「――お前ら、いい加減にしろ!!」
★ ★ ★
「日本公演の次は、いよいよ全米横断だ! ルイスもさ、全英No.1のお祝いしようって、言ってくれてるんだ」
移動のバスの中
トニィは終始ご機嫌だ。
The Cure - Boys Don't Cry