1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.4-009 Lost The Way

ティーブンを連れてきてくれた
ヤスには感謝するよ。

もし、あの音を聴いた時
ティーブンがいなかったら
僕等だけでは、対処できなかったに
違いない。
フレッドも吠えるどころか
固まってしまっていたし……

僕は心底、フレッドに悪いことをした
という気持ちで一杯だった。


暫くすると、ウェイターがやってきて
ティーブンに電話だと耳打ちした。

重苦しい空気の中、食事を進めていると
電話から戻ってきたスティーブンが
さっきまでとは違った
明るいトーンで話し始めた。

「皆んな、朗報だ! ノーマンレーベル米国本社が、君達に興味を持ってきたぞ。重役広報のレッド・レイノルズが、君達に目を付けたんだ。レッドとは旧知の仲だ。早急にアメリカへ行ってレッドに会ってくる。そして今度こそ、君達にピッタリのプロデューサーを連れてくるよ!」

そうスティーブンは言い残し
食事も早々パブを後にした。
僕はまだ、半信半疑だったけど――

◇ ◇ ◇

ティーブンがアメリカに行ってる間、
バンドは束の間の休みをもらった。

僕は最近になって
ようやっと手に入れた愛車で
ドライブを楽しんでいた。

ステイシーは我が家のガレージに
フランス産の中古車が置かれているのは
気に入らないみたいだけど
仕方ないよね?
姉弟のメアリーの旦那、
フランス人のローランドの口利きで
安く手に入れたんだから!

でも残念ながら、まだ女の子とは
ドライブできてなくて
もっぱらフレッドのスーパーへの
買い出しに使われる日々。

あの日も、北風が吹く小雨の中
買い出しから戻ってくると
リビングに見慣れないスーツケースが
無造作に開いて置いてあったんだ。

「マム帰ってきたんだ? これマムのだよね⁉︎ 若く見せたい年頃なんだねぇ」
と目を丸くするフレッド。

パステルピンクのスーツケースの中には
可愛らしいリボンの付いたポーチや
レースのドレスが、散乱していた。

フレッドがステイシーを呼ぶけど
返事は無い。

「また仕事で、すっ飛んでったんじゃないの? あ~疲れた。先にシャワー浴びてくるよ」

僕はバスルームに向かい
少し開いていたドアを開けた、その瞬間

「きゃあーっ‼︎」って悲鳴に

「うわぁーっ‼︎」って僕の叫び声が
重なった。

始めから読む(No.4-001)

 

 ジェムの愛車、ワーゲンでもミニでもなく、プジョーをイメージしました。皆んなを乗せたいから4ドアセダンで、時代的に304 or 305? 別にルノーでもシトロエンでもいいけど(よう分からんし)ローランドとは仲直りした、ということでw あれから9年・・・2人とも、大人になりました( ˘ω˘ )