1980s 洋楽★創作物語

Original Stories of 1980s Pops〜80年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s楽曲が登場!20年振りに描くイラストも一昔前風・・・( ˘ω˘ )

No.4-011 Lost The Way はにかみ屋?

僕はルイスをなだめなきゃと
変に焦ってしまった。

「大丈夫! トニィとあの人は何でもないよ、害はないよ?」

「あたり前でしょ⁉︎」

彼女は一睨みして
話を続けた。

「それで、トニィからの手紙を頼りに、ここに来てみたの。詳しい住所は知らなかったけど、写真を見せたらタクシーの運転手さんが良くしてくれて」

そういえば、トニィが
まだロンドンに来たばかりの頃、
あちこち写真を撮っていたっけ。
確かに家の前でも
皆んなと写った覚えがある。

フレッドが怪訝な顔をした。

「でも、どうやって家に入ったの?」

「チャイムを鳴らしたら、女の人が出てきたのよ。事情を話したら、中で待ってていいって言ってくれたの。彼女急いでいたみたいで、入れ違いで出て行ったようだけど?」

「やっぱりマム、帰ってきてたんだ」
と呆れるフレッド。

「あの、私とっても疲れてて……ロンドンは凄く寒いし。それで勝手にシャワーを借りちゃったの。ごめんなさい」

塩らしくなったと思ったら、
ルイスは元気よく立ち上がった。

「じゃあ早速、トニィの所まで連れてってよ? あ、その前に、安くて素敵なホテルを紹介して。本当はトニィの所に泊まるつもりだったのに、あの女――! ほら、荷物持って⁉︎」

顔を見合わせる、僕とフレッド。

ちょっと強引な子だなぁ。
本当に、あの穏やかなトニィの彼女?

僕は疑いつつも車のキーを手にすると、
逃げようとするフレッドを捕まえて
3人で家を出発した。

そして、ルイスを観光客に人気の
ホテルにチェック・インさせてから、
トニィのフラットまで
送ってあげたんだ。

◆ ◆ ◆

「ルイス? どうして⁉︎」

トニィの驚いた顔!
口を開けたまま固まっているよ。

それにしても
身長差のあるカップルだな、と
マジマジ二人を見てしまう。

ルイスは困惑しているトニィに構わず
ズカズカと家に上がり込んだ。
大丈夫、
うるさいフラットメイトは留守だ。

僕等もトニィの部屋に入るのは
初めてだけど、
脱ぎ散らかした衣服、
転がってるビールとコーラの空き缶、
ドラムパッドの上には
食べかけで剥き出しのチョコバー、
ベッドの上に無造作に
重なっているのは――
My VENUSオレの女神』って派手な見出しで
セクシーな表紙の
ポルノ雑誌じゃないか⁉︎

僕は思わず横に移動し、
ルイスから見えないように
気遣ってしまった!

ルイスは黙って少しだけ窓を開けると
(確かにむさ苦しい)
壁に貼られた家族や二人の写真を
一つひとつ確かめるように眺めながら
一言、呟いた。

始めから読む(No.4-001)

 

 ブラック・キャブと呼ばれているロンドン名物のタクシー。かつてはクラシカルな印象の黒いオースチンで、一度は乗ってみたいと憧れました(一回だけ乗れた♩)
 ロンドンのタクシー運転手は、町中を熟知しないと難関試験に突破できない、プロ中のプロ。ジェム達の家は高級住宅街にあるので、きっと分かるはず! それにステイシーって、しょっちゅうタクシー使ってる、お得意様な気がするしw