1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.4-011 Lost The Way

僕はルイスをなだめなきゃと
変に焦ってしまった。

「大丈夫! トニィとあの人は何でもないよ、害はないよ?」

「あったり前でしょ⁉︎」
彼女は一睨みして
話を続けた。

「それでトニィからの手紙を頼りに、ここに来てみたの。詳しい住所は知らなかったけど、写真を見せたらタクシーの運転手さんが良くしてくれて……」

そういえばトニィが
まだロンドンに来たばかりの頃、
あちこち写真を撮りまくってたっけ。
確かに家の前でも
皆んなと写った覚えがある。

「でも、どうやって家に入ったの?」
フレッドが怪訝な顔をする。

「チャイムを鳴らしたら女の人が出て……事情を話したら、中で待ってていいって言ってくれたの。彼女急いでいたみたいで、入れ違いで出て行ったようだけど」

「やっぱりマム、帰ってたんだ」
呆れるフレッド。

「あの私、凄く疲れてて……ロンドンは凄く寒いし。それでちょっとでいいからと、勝手にシャワーを借りちゃったの。ごめんなさい」

塩らしくなったと思ったら
ルイスは勢いよく立ち上がった。

「じゃあ早速、トニィの所まで連れてってよ? あ、その前に、安くて良いホテルを紹介して。本当はトニィの所に泊まるつもりだったのに、あの女――! ほら、荷物持って⁉︎」

顔を見合わせる、僕とフレッド。

ちょっと強引な子だなぁ
本当に、あの穏やかなトニィの彼女?
そう疑いつつも
逃げようとするフレッドを捕まえ、
車のキーを回した。

そしてルイスを、繁華街にある
観光客に人気のホテルに
チェック・インさせてから
トニィのフラットへ送ってあげたんだ。

 

「ルイス? どうして⁉︎」
トニィの驚いた顔!

それにしても
身長差のあるカップルだな、と
マジマジ2人を見てしまうよ。

ルイスは困惑しているトニィに構わず
ズカズカと家に上がり込んだ。
大丈夫、
うるさいフラットメイトは留守だ。

僕等もトニィの部屋へ入るのは
初めてだけど、
脱ぎ散らかした衣服
転がってるビールとコーラの空き缶
ドラムパッドの上には
食べかけのチョコバー
ベッドの上に無造作に
重なってるのは――
My VENUSオレの女神』って派手な見出しの
ポルノ雑誌じゃないか⁉︎

僕は思わず横移動し、
ルイスから見えないよう
気遣ってしまった!

ルイスは黙って少しだけ窓を開けると
(確かにむさ苦しい)
たくさん壁に貼られた
家族や2人の写真を眺めながら
一言、呟いた。

始めから読む(No.4-001)

 

 ブラック・キャブと呼ばれているロンドン名物のタクシー。かつてはクラシカルな印象の黒いオースチンで、一度は乗ってみたいと憧れました(一回だけ乗れた♩)
 ロンドンのタクシー運転手は、町中を熟知しないと難関試験に突破できない、プロ中のプロ。ジェム達の家は高級住宅街にあるので、きっと分かるはず! それにステイシーって、しょっちゅうタクシー使ってる、お得意様な気がするしw