すかさずマークは、ポケットから
デモテープを取り出した。
スティーブンも驚いたようだ。
「これは用意がいいな。早速、聴かせてもらうよ」
そして遠くから
彼等に声が掛かると
「じゃあライキーでのライブ、頼んだよ。詳しい話はマネージャーにさせるから」
「ライキーでの君達のプレイ、楽しみにしている」
そう言い残し
去って行く2人を見送ると
皆んな一斉にマークを見た。
「デモテープを用意してくるなんて、凄いな」
「デモテープぐらい、いつも持ち歩いてる。いつチャンスが来るか、分かんねーからな」
相変わらず
事を鮮やかに進めていくマークに
感嘆の溜め息が漏れた。
僕は次の日
『バージンレコードロック年間』と
『メロディーメイカー年間』を購入して
レコード会社や音楽事務所について
ちょっとばかり勉強したんだ。
マークの
「プロになりたい、成功したい」
という思いが
生半可じゃないことを実感すると
マークばかり頼りにしてちゃ
いけないからね。
それから僕等は
短いサマーホリデーを取った後、
セント・ブライアンズに集まることに
なってたんだけど
LAから帰国したばかりのトニィから
早目に来るよう催促の電話が入った。
何事かと聞いても
「会ってからのお楽しみ♩」
とだけ告げたトニィの声は
妙に弾んでいた。
当日、セント・ブライアンズには
トニィ、僕、フレッド、ヤスが
顔を揃えた。
一人足りなくない?
「いいの、いいの」
トニィは周りの様子をうかがうと
手招きして僕等を集める。
そして、大事そうに抱えていた袋から
中身を一気に取り出した。
「ジャジャーン! 見てくれ、このアルバム!」
皆んなで輪になって
そのアルバムのジャケットを
眺めてみると――