「僕、キーボードなら、少しできるけど?」
フレッドが手を挙げた。
えっ⁉︎
「ダッドと住んでた頃に演ってたバンドの、キーボードだった友達に教わって……あんまり上手くないけどね」
照れ臭そうに答えるフレッド。
キーボード? バンド?
そんなこと、初耳だよ!
「それならジェムもバッキングできるし、曲の幅が広がりそうだな!」
前のめりになるマークを見て
ウォルターが嬉しそうに声を掛けた。
「そういえば、この前ジョン達のバンドのオーディションに、アメリカ訛りのドラマーが来てたな。6.2フィートはありそうな長身で、なかなかの男前だった。ジョン達とはスタイルが違ったけど、君達とは上手くいくかもしれない。連絡してみようか?」
「ああ、頼むよ。オレ、オーディション苦手だからさ」
「マークはジーッと人の演奏を聴いてられないからな。ライブじゃないと、直ぐ飽きちまう」
そう笑ってウォルターは
「君達なら客も呼べそうだ。客が入れば、もちろん出演料を払うよ。期待してる」
と大きく頷き、またステージへと
去って行った。
〝出演料〟
僕は俄然、ヤル気になった!
こうして僕等は
バンド名を考えることを宿題にして
セント・ブライアンズを後にした。
次の日はヤスに
家に泊まりにおいでと誘った。
ユミコが昨日から仕事でいないと
聞いたからだ。
僕等の方も、ステイシーとミスターが
いないのを知っていた。
ステイシーは
とうにモデルを辞めて
ミスターの協力で
美容系コンサル会社を経営している。
ちょうど僕が荒れてた頃
一波乱あったらしく
確かにガキに構ってられる時期じゃ
なかったみたいだ。
女性社長に同族企業の取締役と
母と義父は、ご立派なもんだよ!
そんな親のいない間に
少年達が集まって、何するかって?