「まあ直ぐには無理だけど、ステイシーのことは、受け入れるよう努力するよ」
そう言うと、フレッドは
嬉しそうに頷いた。
――強い男になるんだ。
誰も傷つけないくらい強く――
ダッドの残した言葉が
強く心に響いていた。
★ ★ ★
「ほら、寝ぼけてないでジェム⁉︎ 皆んな帰ってきたよ。パーティーは、終わったみたいだね」
フレッドの声で、意識が戻る。
「よっ、ご兄弟! 2人とも抜け出してたなんてズルいぞ!」
ドアからマーク、ヤス、トニィの3人が
顔を出していた。
ボヤけていた視界も、現実に戻る。
でも、まだ酔っ払いモードの僕に
フレッドがせっついた。
「ヤスが帰ってきたから、自分の部屋に戻んなよ?」
「え~独りにするなよ、寂しいよ~」
フレッドの背中に抱きつき
頬ずりする僕を見て〈おおーっ!〉と
皆んなが、赤い顔でどよめいた。
「俺は別に構わないけど。ジェムの部屋で寝るから」
そう言って
自分の荷物を持ち出すヤスに
慌てるフレッド。
マーク、ヤス、トニィは
「兄ちゃんの頼みは断っちゃいかんよ?」
「じゃ、おやすみ!」
「ジェム、頑張れよ~」と
それぞれ手を振り、部屋を後にした。
「な、何を頑張るんだよ⁉︎ 皆んなの裏切り者~!」
叫ぶフレッドに構わず
引っ付く僕。
「つれないなぁ、たった2人の兄弟じゃないか?」
「もう離してよ、自分のベッドに戻るんだから」
そう言われても構わず
彼の腰に手を回して抱きしめた。
「照れちゃって可愛いねぇ、う~ん……愛してるよ……」
「ううっ⁉︎ い、いい加減にしろ~‼︎」
8年間のブランクがあったせいか
フレッドとは、兄弟というより
親友って感じだ。
僕はこの、とっても素直で
揶揄いがいのある弟が、大好きなんだ!
翌朝、目が覚めると
左の頬が赤くなっていた。
「あれ、何だコレ⁉︎」
鏡の前で、考え込む僕。
「あのジェムの顔、何があったんだフレッド⁉︎」
「僕は悪くないんだヤス! だってジェムが、その……」
「何々フレッド君? マーク兄さんに教えなさい!?」
「おい、何だってマーク? えっ、マジで⁉︎」
「トニィ、俺にも教えろよ。えっ、キス? マウス・トゥ・マウスで⁉︎」
3人とも、ゲラゲラ笑い出す。
「……もう、皆んなして何なんだよ⁉︎ それより昨日はシングル・ルームのはずだったのに、何でこっちのベッドで寝てたわけ? せっかく一人で快適な部屋だったのに、なんで~⁉︎」
むくれる僕に、フレッドは
プイッと顔を背けた。
「知らない! ジェムはもう、お酒禁止!」
どうやら僕は
何かやらかしたみたいだ。
……To be continued