1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.1-020 Mollycoddle

「どうした少年、そのエプロン坊やは何者だ?」
エースはチラッと僕等を見るも
そのままスティックと、話を続けた。

「たまには女でも連れて来いよ」

ファズが、せせら笑うと
フレッドはビクついて、声を細めた。

「ジェム、帰ろうよ……今までこんな所にいたの? 良くないよ、こんな――」

「帰りたきゃ一人で帰んなっ」

冷たくあしらう僕の腕を
引っ張るフレッド。

「帰ろうジェム、マムも心配してるよ?」

その台詞に
余計カッとなった。

「心配⁉︎ あの女が心配なんて、するもんか!」

「ジェム!」

「威勢がいい、エプロン君だな」

ニヤつくファズを見て
フレッドは戸惑いながらも
落ち着きを取り戻した。

「ねえジェム、スターライトは弾いてる? スターライト・ルームには行ってるの?」

……知らないね」

そんな名前、もう何年も
聞いてなかった。

するとフレッドは、隅に置いてあった
チューニングも粗末な
フェンダーに気付き、手に取ると
懐かしいスターライトを
弾き出したんだ。

部屋中に、歪んだエフェクター
強烈な音が響き渡り
なんとも奇妙な空間と化した。

フレッドの弾き方は
懐かしいダッドの姿を
彷彿とさせた。それに凄く巧い。
きっとダッドに、色々
教えてもらったに違いない。

そう思うと
居ても立っても居られず叫んだ。

 

「――やめろよ!!」

 

始めから読む(No.1-001)

 

 エレキギターでクラシックと言えば、イングヴェイ・マルムスティーンさん。っていう事しか分かってないので、早速YouTubeをチェック。新日本フィルさんと共演もしてたんですね。凄い早弾き!(゚o゚;;
Music Video
Yngwie Malmsteen - Brothers (Japan Philharmonic Orchestra)

 

その他のアーティストも登場!

No.1-019 Mollycoddle

feat. Adam Ant

「その分じゃ、何も聞かされてないみたいだね⁉︎ ダッドはね、病気で天国へ逝っちゃったよ。だから僕はマムに引き取られた」

あまりの事に言葉を失っていると
そこへステイシーが、昼だというのに
寝起きの姿で現れた。

「あら、ジェームス居たの? どうせまた、お金を持ち出しに来たんでしょう。まったく情けない兄ね……弟をごらんなさい。しっかりしていて、料理だってできるのよ。フレッド、早速だけどお茶を淹れて、朝食をお願い」

そんなステイシーの態度にムッときて
そのまま家を飛び出した。

フレッドが慌てて、エプロン姿のまま
追いかけて来た。

「待って、何処に行くの⁉︎

僕は振り返ると、ニヤッとしながら
口ずさんだ。

 

 ~ グッディ・トゥ、グッディ・トゥ、靴の揃った、いい子ちゃん 微妙な皮肉を続けてる 腹の中には何か隠してるくせに

[Adam Ant『Goody Two Shoes』Released:7 May 1982]

 

そして、身を翻し大通りに出ると
タイミング良くやって来た
ダブルデッカー[二階建てバス]に
飛び乗った。

撒いてやったと思ったのに
フレッドは、エプロンのポケットから
小銭入れを取り出すと
一緒にダブルデッカーに乗り込み
溜まり場のフラットまで
付いて来てしまった。

始めから読む(No.1-001)

 

 アダム・アントさん、ご登場\(^o^)/ ニューロマンティックニューウェーブの祖っていうか、元祖コスプレーヤー⁉︎ 1980年代前半にヒットを飛ばしてて、このキャッチーなイントロを聞いたことある人も多いかと。
 ちなみに「グッディ・トゥー・シューズ」とは、いい子ぶりっ子、優等生ぶった子という意味で、昔の物語に出てくる女の子のあだ名が由来だそうです。このMVも、秘書っぽい真面目そうな女性が髪を下ろすと⁉︎……って感じw
Music Video
Adam Ant - Goody Two Shoes
 

 

その他のアーティストも登場!

No.1-018 Mollycoddle

リンダが行ってしまうと、僕はまた
荒んだ生活に戻ってしまった。

本当は、あの連中と付き合うことに
何の価値も無いと、分かっては
いたんだ。

リンダの言葉を思い出しては
「ここから抜け出さなきゃ」と思うのに

「ここに居れば、もう独りになることはない」

という気持ちに駆られ
居場所を失うことを、恐れてしまった。

それでも、たまに
家に帰ることもあったんだ。
僕がモデルの息子だと知ったエースが
家から金を持ってくるよう
命じたからね。

だから家に帰ると、家政婦用の財布から
何枚か失敬したんだけど
誰にも咎められることは無かった。

ステイシーは顔を合わせても
「どこ行ってたの⁉︎ なんて格好してるの!」
そういった、親らしい台詞は一言も無く
ただ不快そうに僕を見て
疲れた様子で、出かけて行った。

 

そんなある日

 

例の如く、お金を盗りに帰ると
花柄エプロン姿の少年が
キッチンでベルに餌をあげていた。

彼はこっちを見ると驚き

「まさかジェム、ジェムなの⁉︎
と声を震わせ
僕の返事を聞く前に

「今まで何処にいたんだよ⁉︎ このバッドボーイ!」
と駆け寄って来た。

僕と同じ、ブロンドのブルーアイズ。
ダッドを思い出させる雰囲気のある
この少年は、弟のフレッドだった。

8年振りの再会は、いきなり壮絶だ。

「お前こそ、なんで此処にいんだよ⁉︎ ダッドの所で、可愛がってもらってればいいだろう?」

その時、思い出したんだ。
弟が憎いという感情を。

――君はダッドに引き取ってもらい、さぞかし良い子に育ったんだろう。それに比べて僕は……

やるせない気持ちでフレッドを睨むと、
彼は信じられない話を口にした。

始めから読む(No.1-001)

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No.1-017 Mollycoddle

「あんなクソみたいな奴ら、付き合ってらんないよ」

その日以来、リンダとは
急速に親しくなっていった。

彼女は父親が合唱団員で
小さい頃から歌っていたから
発声方法には詳しいと
ヴォイストレーニングを
してくれたんだ。

但し条件として

「ちゃんと家に帰って、学校に通うこと。煙草・ドラッグ・アルコールの禁止」を求められた。

こうして僕は
歌う楽しさに目覚めたんだ! 

彼女は、とても頭が良くて
少年の僕に色々なことを、教えてくれた。
(ベッドの中でもね)

そんな生活をしている内に
さすがにエースも、リンダの様子が
今までと違ってきていると
気付き始めた。

問い質すエースに、リンダはハッキリと
別れ話を切り出した。

彼女はエンターテインメントを
本格的に学ぶため、
ブロードウェイに旅立つ決心を
したからだ。

 

リンダは話してくれたよ。

 

夢を追いかけて、田舎から
憧れのロンドンにやって来たのに
気付けば、こんな後ろ暗い所で
投げやりな生活をしていたと。

でも、僕のヴォイストレーニングを
している内に、もう一度
夢を追いかけたくなったと
笑顔を向けた。

「ありがとね坊や。その声、大事にしなよ」

立ち去るリンダを見送ったけど
メアリーの時程、ショックはなかった。

もちろん、寂しくはあったけど
リンダは誰の束縛も受けない、
そんな女性だと
理解していたからね。

 

そして僕は、ちょっぴり大人になって
すっかり変声も終わった頃、
彼等の夜の仲間にも
入れてもらえるようになった。

ファズなんか、GFを皆んな
僕に取られたって騒いでいたけど
この頃の僕には、女の子なんて
どれも同じだった。

始めから読む(No.1-001)

 

 リンダちゃん、パンク・ファッション女子です。ジェムもパンクに影響されるだろうけど、さすがにモヒカンやスキンヘッドには、したくない……なので理想のイメージは、パナッシュのポール・ハンプシャー君!(曲は知らなかったのでYouTubeをチェック!)美少年と言うより美女⁉︎ っていうぐらい、めっちゃ美人さん♡(≧∇≦)


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No.1-016 Mollycoddle

feat. The Clash

別に彼等を好きなわけじゃ
なかったよ。

彼等はいつも、女の子を連れ歩き
昼間っから酒やドラッグを浴びては
他のグループと賭け事に
明け暮れていた。

夜は変な連中しか来ない
ライブハウスに出ちゃ騒音をかき鳴らし
唾をかけられたりして、しょっちゅう
トラブルを起こしていたしね。

彼等の演奏する音にも
ウンザリしていたよ。

それでも、一緒にいたのは
彼等は僕の存在を
認めてくれていたから――

彼等と過ごすようになった僕は
喧嘩やドラッグにポーカー、それと
Sex PistolsThe Clash
を覚えていった。

◇ ◇ ◇

週末のライブが終わった後は
決まって大勢の仲間が、集まっていた。
その度、みそっかす扱いの僕は
雑用を言いつけられ、追っ払われた。

あの日も、一人フラットに戻り
ギターを爪弾いてると、ドアが開いた。
リンダだった。

「あら坊や、いたんだ?」

彼女は隣に腰を下ろすと
僕のふかしていた煙草を取り上げ
自分の唇に挟み、ゆっくり煙を吐いた。

「坊やさ、良い声質持ってるんだから、煙草やドラッグは止めな。大事な時期でしょ?」

この頃、僕は丁度
変声の時期を迎えていて
喋るのが億劫になっていた。

でもリンダは、他の女の子達と違って
ちょっと変わっていたからか
一緒にいるのは、心地良かった。

彼女はクールで、マイペースで
淡々とした感じが
なんだか格好良かったんだ。

エースも他の男には
手出しさせなかったしね。

しかし、リンダは言う。

 

 パンク・ロックは70年代後半が全盛期みたいですね。パンクは全然分からないので、取り敢えず代表的な2つのバンドを改めてチェックしてみると、セックス・ピストルズの曲は全く知らなかった(汗)クラッシュは『London Calling』(1979) が有名だけど、CMでも流れている『I Fought the Law』(1979) が、カバーらしいけどカッコ良い!
 こうして映像を見ると、ファッション的にはパンクな感じがしないんだけど、Wikiによるとパンク・ファッションとパンク・ロックは、別ものらしいです。なる程( ˙o˙ )
Music Video
The Clash - I Fought the Law
 

 

その他のアーティストも登場!

No.1-015 Mollycoddle

ある日、繁華街の裏手で
声を掛けられた。

「良いとこのお嬢ちゃんが、こんな場所にいちゃいけないな~」

振り返ると
僕とそう年が変わらない少年が
ニヤニヤしながら立っていた。

典型的な、ワーキング・クラスの彼
ファズに連れられて、繁華街の中でも
物騒なエリアに入り込んだ。

真っ昼間だって
〝キチッとした格好の人間は歩けない〟
そんなエリアにある、フラットの空き室には
ファズと仲間のエース、スティックの
3人を中心に、他にも入れ代わり立ち代わり
柄の悪い連中が出入りしていた。

彼等はBAD MOUTHという
バンドを組んでいた。以前は紅一点の
リンダがヴォーカルだったけど
彼女が喉を痛めてからは
リーダーのエースが
ヴォーカルとギターを担当していた。

エースは僕のギターの腕を知ると
度々ステージに、上げてくれたんだ。

下心有り有りで、僕を連れてきたファズは
僕が男だったことに
ショックを受けていたのは笑ったな。

 

夏休みになると、ステイシーは僕を
サマーキャンプに行かせようとしたけど
僕はドタキャンして
ファズ達のいるフラットに向かった。

そのまま僕は、この髪を変な色に染めたり
穴という穴にピアスをしたり
得体の知れないものを
ジャラジャラぶら下げたり
布をビリビリに破いた服を着ていた
3人組と、過ごすようになった。

始めから読む(No.1-001)

 

 エース[17歳:Vo, Gt]ファズ[15歳:Ba]スティック[18歳:Dr]全部ニックネーム。本名は……(知らんw)

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No.1-014 Mollycoddle

pick out: Me and Mrs Jones

それでも、メアリーが無事に
女の子を産んで会わせてくれた時は
嬉しかったな。

この小さな命が
笑いかけてくれるのを見ていたら
メアリーが一大決心して
ローランドに付いて行ったのは
正しかったと思えたんだ。

◇ ◇ ◇

メアリーという、心の支えを失った僕を
見兼ねたミスターが
ギター教室に通わせてくれた。

先生はロックにも明るく
色々教えてくれたんだけど
もう、あの頃のように
夢中になって弾くことは
できなかった。

シニア・スクール[私立中学校]に
入学しても、淡々と日々を
過ごしていった。

そして、これまでずっと面倒を
見てくれていたMrs.ジョーンズも
高齢を理由に、娘夫婦に引き取られて
行ってしまった。

後任は住み込みではなく
都度、ハウスキーパーやシッターが
派遣されてくる形となり
僕は本当に、独りぼっちとなってしまった。

英語があまり話せないハウスキーパー
19時で帰ると、段々と虚しさが募り
独りで家にいるのが、辛くなった。

 

こうして14歳の僕は、度々夜の繁華街を
彷徨くようになっていった。

 

 この物語を書くにあたって困ったのが、イギリスは子供を一人にしちゃダメなこと。お留守番はもちろん、学校の送り迎えも保護者が必要なんです。親は仕事でいない設定にしたいけど、子供を一人にできない……そうなると登場するのが、ナニーやベビーシッターさん。ジェムが一人行動できる中学生を待って、Mrs.ジョーンズは引退させていただきました (^^ゞ
 ナニーの名前を考えた時に〝ミセス○○〟と言えば〝ジョーンズ〟と即答だったのは、この曲がインプットされていたからかも⁉︎↓
 
Music Video
Billy Paul - Me and Mrs. Jones
 

 

その他のアーティストも登場!

No.1-013 Mollycoddle

「ジェム! 今のは英国紳士ジェントルマンの口の訊き方じゃないわ。謝りなさい」

こんな風に怒ったメアリーは
初めてだった。

僕はショックで

「メアリーなんか大っ嫌いだ! フランスでも何処でも行っちまえ!」
と吐き捨て、リビングを飛び出した。

程なくして
ステイシーとミスターが帰ってきて
Mrs.ジョーンズが、声を掛けてくれたけど
もう自室に閉じ籠るしかなかった。

自分でも、いつまでも甘えん坊で
11歳も年下の僕じゃ駄目なことぐらい
理解していた。
ただもう少し、僕だけのメアリーで
いて欲しかったんだ。

隣に住んでいたヤスも
日本に帰ってしまったから
この頃の僕が心を許せたのは
彼女だけだった。

学校でも友達らしい友達は
いなかったし、必要なかったんだ。
家に帰れば、メアリーが
いてくれたから――

でも、もうメアリーでさえ
信じられなくなってしまった。

 

メアリーは大学を卒業して
安定期に入ると
早々に里帰りを決めた。

彼女は、涙ながらに僕を抱きしめ

「暫くは会えないけれど、元気でね。いつまでも愛してるわ」

そう言い残し、去って行った。

そんな彼女の言葉を、信じると思う? 
気休めはたくさんだった。

この時は一瞬
ダッドとフレッドの所に
行こうかと思ったよ。

だけど

「2人とも僕のことなんか忘れて、幸せに暮らしてるんだ。もしかするとダディも、マムと同じように再婚してるかも」

そう思うと、何もかも嫌になった。

始めから読む(No.1-001)

 

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