1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスを含むバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場!

No.1-018 Mollycoddle

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リンダが行ってしまうと
僕はまた、荒んだ生活に戻ってしまった。

本当は、あの連中と付き合うことに
何の価値も無いと、分かってはいたんだ。

リンダの言葉を思い出しては
「ここから抜け出さなきゃ」と思うのに

「ここに居れば、もう独りになることはない」

という気持ちに駆られ
居場所を失うことを、恐れてしまった。

でも、たまに家に帰ることもあったんだ。
僕がモデルの息子だと知ったエースが
家から金を持ってくるよう、命じたからね。

だから家に帰ると、家政婦用の財布から
何枚か失敬したんだけど
誰にも咎められることは無かった。

ステイシーは顔を合わせても
「どこ行ってたの⁉︎ なんて格好してるの!」
そういった、親らしい台詞は一言も無く
ただ不快そうに僕を見て
疲れた様子で、出かけて行った。

 

そんなある日

 

例の如く、お金を盗りに帰ると
花柄エプロン姿の少年が
キッチンでベルに餌をあげていた。

彼はこっちを見ると驚き

「まさかジェム、ジェムなの⁉︎」と声を震わせ、僕の返事を聞く前に

「今まで何処にいたんだよ⁉︎ このバッドボーイ!」と駆け寄って来た。

僕と同じ、ブロンドのブルーアイズ。
ダッドを思い出させる雰囲気の
この少年は、弟のフレッドだった。

8年振りの再会は
いきなり壮絶だ。

「お前こそ、なんで此処にいんだよ⁉︎ ダッドの所で、可愛がってもらってればいいだろう?」

その時、僕は思い出したんだ。
弟が憎いという感情を。

――君はダッドに引き取ってもらい、さぞかし良い子に育ったんだろう。それに比べて僕は……

やるせない気持ちでフレッドを睨むと、
彼は信じられない話を口にした。

始めから読む(No.1-001)

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