「どうした少年、そのエプロン坊やは何者だ?」
エースはチラッと僕等を見て
そのままスティックと、話を続けた。
「たまには女でも連れて来いよ」
ファズは、せせら笑った。
フレッドはビクつき、声を細めた。
「ジェム、帰ろうよ……今までこんな所にいたの? 良くないよ、こんな――」
「帰りたきゃ一人で帰んなっ」
僕は冷たくあしらった。
「帰ろうジェム、マムも心配してるよ?」
そんな弟の台詞に
僕は余計カッとなった。
「心配⁉︎ あの女が心配なんて、するもんか!」
「ジェム!」
「威勢がいい、坊やだな」ファズが笑う。
フレッドは戸惑いながらも
落ち着きを取り戻した。
「ねえジェム、スターライトは弾いてる? スターライト・ルームには行ってるの?」
「……知らないね」
そんな名前、もう何年も聞いてなかった。
するとフレッドは、隅に置いてあった
チューニングも粗末なフェンダーに気付くと
懐かしいスターライトを、弾き出したんだ。
部屋中に、歪んだエフェクターの
強烈な音が響き渡り
何とも奇妙な空間と化した。
フレッドの弾き方は、懐かしいダッドの姿を
彷彿とさせた。それに凄く巧い。
きっとダッドに、色々教えてもらったに
違いない。
僕は居ても立っても居られず叫んだ。
「――やめろよ!!」