「私が悪いって言うの?」
ルイスのひと睨みで
大きく首を横に振るトニィ。
「いや……なんで急に……わざわざこっちに来てくれたのかと……も、もしかして――」
しどろもどろなトニィに
苛立つルイスが遮った。
「もしかして『もうオレのこと好きじゃない』とか『オレに別れを言いに来た』とか、そんなこと言うんじゃないでしょうね?」
どうやら図星らしく、
トニィは顔を引きつらせた。
ルイスが口を尖らせ、
凄い迫力で詰め寄っている。
「私が! ただトニィに会うためだけに! わざわざロンドンに来ちゃいけないって言うの⁉︎ っていうか、別れ話でロンドンまで来ないっつーの!!」
「ご、ごめん。でも電話しても、いつもいないし、手紙出しても返事くれないし……アルバイトしてることも一言もなかったから、もう留年したバカなオレに愛想を尽かして――」
「だって急に帰ってくるって言われても、こっちはバイト先のサマーキャンプに出発した後だったの! トニィはいつだってそう。自分の都合優先で、目の前のことしか見えてない……そのくせ本人は、こっちを気遣ってるつもりなんだから」
トニィは大きな身体をしゅんとさせ、
ルイスは深い溜め息を吐いた。
「まったく……留年するわ、感謝祭には帰ってこないわ、トニィをロンドンに引き留めているものが何なのか、確かめないと気が済まないじゃない⁉︎」
そう言ってルイスが振り向くと、
フレッドは肩を竦めてみせた。
「ああ、それで内緒で来たんだね? 抜き打ちチェックみたいな?」
ポカンとしているトニィの代わりに
僕が慌てて答えた。
「トニィには、他に女の子なんていないよ⁉︎ いつも君のことを〝オレの女神だ、ヴィーナスだ〟って自慢してるよ!」
「……あなたの言うことなんて、信用できないわ。トニィを庇ってエッチな雑誌、隠そうとしたクセに」
バレてんじゃん!
思わずベッドに視線を移した僕に
気付いたトニィは、
慌てて雑誌を手にして
「ホンと、オレの『ヴィーナス』はルイスだけだよ! この子も、ちょっとルイスに似てるなって思っただけで――」
そう言うと、雑誌をめくって
ルイスに見せた。
おいおい!
イギリスの3人娘といえばバナナラマ!『ヴィーナス』のオリジナルは、ショッキング・ブルーが1969年にリリースしたヒット曲。それをユーロビートの立役者で有名なプロデューサーチーム、ストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)により、ダンサブルでアゲアゲに仕上げた彼女達の代表曲です。
Bananarama - Venus
その後、音楽的相違というあるあるでシヴォーンが抜けちゃうけど、今もカレンとサラで活動中!
女性は結婚・出産・育児でメンバー全員でのコンスタントな活動は難しくなるけど、年をとっても続けて欲しいですね。日本だとMAX、Perfume 辺りかな・・・? 期待してます\(^o^)/