「電話も早かったし、さては振られたな?」
「何とでも言えよマーク。彼女は長電話するタイプじゃないんだ。なのに『全英No.1おめでとう』って、わざわざ電話をくれたんだよ。優しいだろ?」
今頃〜⁉︎ なんて突っ込みは
聞いちゃいない、デレるトニィ。
そのパン、何個目?
「でも本当は、一緒に来て欲しかったでしょ?」
フレッドが心配そうに
トニィの顔を覗き込むも
「まあ彼女は学生だし、しょうがないよ。それに、日本の次はLAだから」
来週には会えると、嬉しそうだ。
「あ~あ、オレもちゃんと彼女つくろうかなぁ」
マークの奴、今のは本気だな。
ちょっと探りを入れてみようか。
「それは良い傾向だね。で、君の好みの女性は?」
すると割り込むように
自信満々でトニィが答えた。
「もちろんルイスのような、セクシー美女だよな⁉︎ 今までのGF、全員そうだったじゃないか」
「えーっ、それは違うと思うなぁ? マークはあれでいて、淑女が好みなんだよ」
したり顔のフレッドの肩を
マークは軽く叩き、揶揄いだした。
「そう言うボクちゃんは、美人でセクシーなのに攻められたら、フラ~っと寄ってっちゃうんでないの⁉︎ 免疫の無い坊やには危険だぜ。な、ジェム?」
「大丈夫、こいつは意志が強いからね。僕はルックスは気にしないよ。ルックスなんて愛したら、一番先に消えてしまうものだから」
「そうなんだよ! ルイスはとっても良い子なんだ。しかも可愛い♡」
何を言っても
惚気で返ってくるトニィに
フレッドは微笑みながら
「そうだね。それに最初に会った時のインパクトは、かなり大きかったよ?」
とこっちを見てウインク一つ。
僕は困ったことに
ルイスの第一印象は
忘れたいけど忘れられない、
トニィには絶対! 内緒だから
軽く頷き黙りを決め込む。
「確かにルイスは美人だ、胸もある。何だってトニィみたいな、ぬぼ~っとしたのがいいんだ?」
肩を竦めるマークに
トニィは得意気に答えた。
「オレ達は幼馴染なんだよ!? その辺のカップルより、お互いのことを何倍も理解し合ってるからね!」
「ヤスは……どうなんだろうね?」
フレッドは話しに参加してこない
ヤスをチラッと見る。
ヤスはミソ・スープを飲み干すと
こう答えた。
「俺は来る者は拒まず、去る者は追わず主義だから」
「「よく言うゼ~!」」
★ ★ ★
「どう、ジェム? この間作った曲の直し」
フレッドが置いた譜面に
サッと目を通す。
「OK、いいんじゃない?」
マークがカナダに帰って早2ヶ月。
僕等はレコーディングに向けて
マークが残していったモノを
形にできるよう、準備を進めていた。
「ルックスなんて気にしない」云々のくだりは35年前の当時、某アーティストの記事から抜粋したのを覚えてます。子供心にさすが♡とウットリしたものの大人になって分かるのは、こういうセレブの周りには美女が集まり、その中から性格の良い子を選べるという・・・ね( ¯-¯ )