「なんなの、あの態度⁉︎ ちょっとは認めてくれても良くない?」
口を尖らせて
トニィに訴えるルイスに反応して
ヤスは意地悪そうに笑った。
「へえー、俺に認めてもらいたいんだ?」
次の瞬間、ルイスはヤスの足を
勢いよく踏んだんだ!
「だ、大丈夫かヤス⁉︎」
焦るトニィに
「……別に」
と顔色一つ変えないヤス。
だけど休憩時間
トニィとイチャついてるルイスを見て
彼女には分からない日本語で
ずっと悪口を言ってたんだ。
(ヤスって冷静なのか陰険なのか、分からない)
とにかくこの2人は、すっかり
犬猿の仲となってしまったみたいだ。
この後も僕等は順調に進めていき
全てが上手くいっていると思えたのに
突然、予想外のトラブルが
起こってしまった。
それは、ノーマンレーベルの
内部争いだ。
以前から米国本社と英国支社は
仲が悪いらしいけど
ここにきて、それが一気に
表面化したんだ。
しかもその原因は、僕等
The Starlight Night にあるという。
何でも、アメリカ人の英国広報部長が
本国に戻りたがっているのに
昔からライバルと言われている
レッドの存在が、彼の要望の
邪魔になっているとか。
そんな中、
英国支社が独自に進めてきた
新人発掘プロジェクトで
契約した僕等に
レッドのいる本社から
手を回されたのが面白くないと、
今度は本社が見付けてきた
新人グループを、英国支社が
バックアップし始めたんだ。
同じ会社なのにバンドを利用して
米国本社と英国支社が
パワーゲームを始めるなんて――
それを知った僕等は、スティーブンの
マネージメント・オフィスに
駆け込んだ。
「一体どうなってるんですか?」
「本社も支社も、同じノーマンレーベルなのに⁉︎」
「僕達を利用するなんて、僕達はマリオネットじゃない!」
スティーブンも相当
困っているようだ。
「君達、すまないが暫く待っていてくれないか? また連絡するから。こっちも一体どうなってしまってるんだか、まったく状況を理解できないんだ」
そう言ってスティーブンは
掛かってきた電話に出ると
急いでレーベルへ行ってしまった。