僕等は帰る気にもなれず
だからといって
何をできるわけでもなく
その場に、たたずんでいた。
そんな重々しい空気の中
とうとうルイスが口を開いた。
「ちょっと、皆んな元気出しなさいよ?」
しかし、彼女に応える者はいない。
「まさか、デビューできないってわけじゃ、ないんでしょう?」
ルイスはトニィの袖を引っ張っるも、
彼は深く考え込んでしまっている。
「……駄目なの? ねえ、どうなの⁉︎」
そんなルイスに
ヤスの堪忍袋の緒が切れた。
「うるせーなっ、少し黙ってろ!」
「あんたの方が、うるさいっつーの!」
僕は溜め息一つ、なだめるよう
ルイスに説明した。
「仮にデビューできたとしても、それだけで成功できるわけじゃないんだ。どんなに実力があっても、レコード会社が親身になってバックアップしてくれなきゃ駄目なんだ、悔しいけど」
フレッドも自分に言い聞かせるように
語気を強めた。
「つまりね、どのくらいお金をかけて宣伝してくれるかってことなんだよ? そのために僕達は、なるべくメジャーなレーベルをって、ノーマンと契約したんだから!」
ヤスも間髪入れず続けた。
「だからって、いいように利用されるつもりはないけどね」
そして、また静まり返る――
「あー、もう! こんなんじゃ心配で、LAに帰れないわ」
ルイスの台詞に
ハッと我に返るトニィ。
「そうだルイス、いつ出発だっけ?」
「もう明後日の便よ。でも決めた、帰るのやめる!」
それを聞いて
トニィは慌て出した。
「何言ってるんだよ⁉︎ こっちは平気だから、明後日ちゃんと帰るんだ。大学だってあるし、家族も心配するだろう?」
「大丈夫よ、今からママに電話してくる。一緒に来てトニィ。国際電話の掛け方、教えて?」
「ま、待てよルイス!」
2人が部屋を出て行くと
ヤスが吐き捨てるように呟いた。
「マジうぜー。トニィが何であんなオンナ選んだのか、分かんないね」
フレッドは、そんなヤスの態度に
「僕も君が何でそこまで、ルイスにイラつくのか分かんないよ?」
と呆れている。