1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.4-016 Lost The Way

フレッドの学校は共学だから
クラスに可愛い子が
いるかもしれないしね!?

「好きな子ぐらい、いるんだろう?」

僕の執拗な突っ込みに観念したのか
真っ赤になりながらも、話してくれたよ。

「恋……かどうかは分からないけど、忘れられない女の子はいるよ」

「へえ〜どんな子⁉︎ その子、今どうしてる?」

好奇心いっぱいに
そう尋ねると

「さあ……どうしてるだろうね。その子はダッドと住んでいた時、仲良くしてたんだ。ほら、前に話したでしょ? 僕にキーボードを教えてくれたガキ大将のサム、あいつの妹なんだ。でも――」

うつむいていた顔を上げ
遠い目をして

「僕、彼女を傷つけちゃったんだ。謝る間もなく彼女達は引っ越して行っちゃって、その直後に僕もこっちに来たから、結局それっきり。今でも凄く後悔してる。できれば会って謝りたいんだけど……そんなの、もう無理だよね」

と力無い笑顔で答えた。

「まったく、君って奴は……」
いじらしい弟を抱きしめようと
手を伸ばすと――

「ちょ、ちょっとジェム! 信号が青になるよ⁉︎」

◇ ◇ ◇

週明け
ティーブンに呼び出された僕は
フレッドとヤスを愛車に乗せ、
ノーマンレーベルのオフィスに到着。
程なくして、トニィとルイスも
仲良くやって来た。

「皆んなゴメン。ルイスが一緒に来るって、聞かなくてさ」

「別にいいじゃない、邪魔するわけじゃないし」

ルイスはトニィの腕に絡み
甘え口調で続けた。

「だってぇ、一人でホテルにいたって、つまらないもの」

「だったら一人でロンドン見物でも、してればいいだろう」
と冷たい視線が――ヤスだった。

ルイスから一転して
甘い空気が消え失せた。

「……そんなの、とっくにしちゃったからいいのよ。買い物も十分したしね。それより、なんで制服着た学生がいるの? チャイニーズ!?」

ヤスは何故か、いつも
チャイニーズに間違えられ
そして不機嫌になる。

「ジャパニーズだ。俺はサックスを担当してる、ヤスアキ・オカベ」

「ふう……ん」
横目でヤスを見るルイス。

な、なんだこの2人?
初対面なのに
火花、散らし合ってない⁉︎

僕はヤスに、コソッと耳打ちした。

「どうしたんだよ!? 彼女がどうかした?」

始めから読む(No.4-001)

 

 フレッドは作詞担当なので、良い歌詞を書かせる原動力になるよう「打つべし打つべし」な経験をさせたくなってしまうのです。その試練に堪える様子は7章で。(ΦωΦ)フフフ…