フレッドの学校は共学だから
クラスに可愛い子が
いるかもしれないしね!?
「好きな子ぐらい、いるんだろう?」
僕の執拗な突っ込みに観念したのか
真っ赤になりながらも、話してくれたよ。
「恋……かどうかは分からないけど、忘れられない女の子はいるよ」
「へえ〜どんな子⁉︎ その子、今どうしてる?」
好奇心いっぱいに
そう尋ねると
「さあ……どうしてるだろうね。その子はダッドと住んでいた時、仲良くしてたんだ。ほら、前に話したでしょ? 僕にキーボードを教えてくれたガキ大将のサム、あいつの妹なんだ。でも――」
うつむいていた顔を上げ
遠い目をして
「僕、彼女を傷つけちゃったんだ。謝る間もなく彼女達は引っ越して行っちゃって、その直後に僕もこっちに来たから、結局それっきり。今でも凄く後悔してる。できれば会って謝りたいんだけど……そんなの、もう無理だよね」
と力無い笑顔で答えた。
「まったく、君って奴は……」
いじらしい弟を抱きしめようと
手を伸ばすと――
「ちょ、ちょっとジェム! 信号が青になるよ⁉︎」
週明け
スティーブンに呼び出された僕は
フレッドとヤスを愛車に乗せ、
ノーマンレーベルのオフィスに到着。
程なくして、トニィとルイスも
仲良くやって来た。
「皆んなゴメン。ルイスが一緒に来るって、聞かなくてさ」
「別にいいじゃない、邪魔するわけじゃないし」
ルイスはトニィの腕に絡み
甘え口調で続けた。
「だってぇ、一人でホテルにいたって、つまらないもの」
「だったら一人でロンドン見物でも、してればいいだろう」
と冷たい視線が――ヤスだった。
ルイスから一転して
甘い空気が消え失せた。
「……そんなの、とっくにしちゃったからいいのよ。買い物も十分したしね。それより、なんで制服着た学生がいるの? チャイニーズ!?」
ヤスは何故か、いつも
チャイニーズに間違えられ
そして不機嫌になる。
「ジャパニーズだ。俺はサックスを担当してる、ヤスアキ・オカベ」
「ふう……ん」
横目でヤスを見るルイス。
な、なんだこの2人?
初対面なのに
火花、散らし合ってない⁉︎
僕はヤスに、コソッと耳打ちした。
「どうしたんだよ!? 彼女がどうかした?」