ちょっとしたフレーズや小曲なら
僕も今までいくつか作ってきたけど
ちゃんとした作曲となると
経験があるのは、マークだけだった。
なので、開店前の
セント・ブライアンズに集まり
マークに色々教わりながら
何とか形にしていった。
問題は〝詩〟
ここで、またもや弟の
新たな才能が発覚したんだ!
「えっ、詩ったって、あんまりちゃんとしたヤツじゃないよ?」
フレッドが照れながら
見せてくれたノートには
ラフなイラスト(女の子の絵⁉︎)
と共に、細かいフレーズが
いくつも散りばめられていた。
ここからアイディアを集めれば
歌詞として、まとまりそうだ。
でき上がった曲を
ウォルターに聴いてもらおうと
僕等は彼の前で演奏してみた。
「うーん――」
ウォルターは、渋い顔をしながら
演奏を終えた僕等を見渡している。
やっぱり、まだまだなんだろうか……
不安げな僕の横を、マークが通り過ぎて
ウォルターと向き合う。
すると
「It's so amazing ! やるじゃないかマーク」
「――だろ⁉︎」
2人は抱き合いながら
お互いの肩をバシバシ叩いた。
「とても出会ったばかりとは思えない。5人とも息がピッタリだ! 曲もいいものを持ってるし、良かったなマーク」
ウォルターが嬉しそうに
マークの頭を大きく撫でた。
そして、店で演奏するよう
言ってくれたんだ!
僕等の評判はなかなか良くて
特に女の子のお客さんが増えて有難いと
ウォルターは喜んだ。
それからマークは、僕のバイト先が
レコーディング・スタジオだと知ると
「なんだよ、早く言えよ⁉︎」
とスタジオまで付いてきた。
スタジオ・オーナーのライリーは
職人気質の貫禄ある強面で
僕は正直ちょっと苦手なんだけど
マークはあっという間に
ライリーやスタッフ達と打ち解けた。