来日中の僕等は
コンサートだけじゃなく、
精力的にプロモーション[宣伝活動]
も行っていた。
多数のカメラのフラッシュを浴びてると
僕等は何しに来たんだろうって
辟易するけど、仕方ないよね。
The Starlight Night の音楽を
たくさんの人々に
知ってもらうためにも
プロモーションは
大事な仕事なんだから。
そして今日も
大阪に着いたばかりの僕等は
リハーサル前の、わずかな時間にも
日本のメディアから
取材を受けることになっていた。
そろそろ指定の場所に移ろうと
僕とフレッドが部屋を出ると、
目の前に慌てた様子で
マネージャーのスティーブンと
A&R※のヘンリーが
飛び出してきた。
※Artists and Repertoire:アーティストの発掘・契約・育成・宣伝戦略・管理等を担当するレコード会社の業務
「マークは? マークはいないのか⁉︎」
「またですかぁ?」
僕とフレッドは呆れ顔だ。
「撮影もあるからと、あれだけ念を押したのに!」
「スティーブン、あんまり興奮すると血圧上がるよ?」
そう言いながら
トニィとヤスも出てきた。
マークは放浪癖がある
ちょっとやっかいな奴なんだ。
「僕がマークを迎えに行きますよ」
「迎えにってジェム、心当たりあるのか?」
ヘンリーが肩を竦めた。
僕はアテンド[プロモーター]の
ヤマグチさんからスタッフを一人借りて
タクシーに乗り込んだ。
マークはスタッフ任せじゃ
捕まらないのは、百も承知。
そして着いた所は
今日のコンサート会場
大阪厚生年金会館だ。
開演まで、まだ5時間あるステージに
ローディー※達と楽しそうに談笑している
マークを発見!
※楽器の輸送・管理・メンテナンス・サポート等、コンサートの裏方業務の担当者
僕は以前マークから、こんなことを
聞いた覚えがあった。
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