feat. Pet Shop Boys
「よーし、気合い入れてこうぜ! Club1000 で成功すれば、レコード会社の目に止まる、千載一遇のチャンスだ!」
マークの掛け声で
皆んな張り切って準備を進めた。
そして
熟考を重ねたセットリストに合わせ
一通り演奏し終わると
「そろそろ一息いれようか?」と
トニィがスナックを配り出した。
僕はそのスナックを手にしたまま
マークとフレッドが
曲間について
意見を戦わせているのを
ぼんやり眺めていると
「またやってるな、あの2人」
トニィは僕の手からスナックを奪い
それを頬張りながら、隣に腰を下ろした。
「マークにやり込められてる、弟が心配?」
「まさか、ただ――」
「――ただ?」
「ただマークが凄いと思って。こんな話、どこから持ってくるんだろう? 音楽業界のことも詳しいし、ウォルターの影響だけじゃ無いような気がするけど……」
考えてみると
出会ってから一年にもなるのに
彼に関して、知らないことばかりだ。
「オレもクリスマス・ホリデーでLAに帰る時、カナダの家族のことを聞いたんだけど、はぐらかされたよ。あいつは帰ってないはず」
トニィはスナックの空袋を
クシャッと丸め
「それ以来、プライベートなことは訊かないようにしている」
とコーラを一気に、飲み干した。
マークはいつも
おちゃらけてて楽しい奴だけど、
僕等メンバーは誰一人
彼のプライベートに
立ち入ることはできなかった。
もちろん皆んな、マークを信頼してるし
今さら過去を掘り起こすつもりもない。
だけど、サングラスに隠された
彼のブラウンの瞳が時々曇るのを
僕はだいぶ前から気付いていた。
そんな僕等がマークに関して
唯一、分かっていること
それは――
「じゃあ、お疲れちゃん」
「マーク、そっちは駅じゃないよ?」
「ああ今のGF、この近くに住んでるんだ。『West End Girls』には懲りた。じゃあな!」
って、かなり女たらしだってこと!
ペット・ショップ・ボーイズの『ウエスト・エンド・ガールズ』は、ハイソ女子達への皮肉が混じる、イギリスらしいお洒落サウンド。でもこのMV、歌っているニールより半分透けているクリスが、気になってしょうがないw
Pet Shop Boys - West End Girls