1980s 洋楽★創作物語

Original Stories of 1980s Pops〜80年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s楽曲が登場!20年振りに描くイラストも一昔前風・・・( ˘ω˘ )

No.3-019 Believe In 背中越しの思い

ユミコは軽く頷き

「やっぱり、イギリスに戻ってきて正解ね。日本だと足並み揃えないと厳しいけど……」

とテーブルに置かれた書類の山を
整えながら話を続けた。

「今、日本は経済的に過度期にあるみたい。翻訳の依頼も増えてきて、収入も安定しているの。お父さんが遺してくれたものもあるし、恭章がすぐ大学に行かなくても構わないのよ?」

「でも、祖父ちゃんが――」

動揺するヤスに
ユミコは笑顔を見せた。

「自分の人生なんだから、自分が納得するまで全力で取り組んでごらんなさい? 大丈夫! 恭章なら、この先どこを目指そうと何をしようと、道を誤ったりしない。お父さんの子だもの」

ユミコが肩を抱いて励ますと、
ヤスは小さく頷いた。

 

 

「いいな……」

ヤスの家から出ると
フレッドが、ぽつりと呟いた。

確かに、ユミコとヤスの親子関係は
羨ましいものがある。
そんな弟の気持ちを察して

「さあ、兄ちゃんの胸に飛び込んでおいで⁉︎」

と両手を広げてみせたけど、
フレッドは一瞬立ち止まるも
そのまま鍵を開け、
黙って家の中に入ってしまった。

そんな冷たい対応……
せめて何か言ってよ⁉︎

◆ ◆ ◆

いよいよ Club1000 でのライブが
始まろうとしていた。

前座のバンドは、僕等を含めて3組で
The Starlight Night が
トップバッターだった。
僕等は他のバンドと一緒に
楽屋で待機中だ。

 

トニィはストレッチで緊張をほぐし
ヤスは何度も譜面を確認している。

フレッドはギターケースに
いつも忍ばせている、
子供の頃に貰ったらしい
ウサギのマスコットを
握り締めていた。(可愛い)

マークは余裕で、隣のバンドに
軽く冗談を飛ばしている。
「気を紛らわせてるだけだ」って
言うけど、頼もしいよ。

僕はヴォイス・トレーニングを
するも、やっぱり緊張気味だ。

そんな僕の肩を叩きながら、
マークはいつもの調子で声を上げた。

「さあ、今日も思いっきり暴れようぜ!」

始めから読む(No.3-001)