1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.3-019 Believe In

ユミコは軽く頷き

「やっぱり、イギリスに戻ってきて正解ね。日本だと足並み揃えないと厳しいけど……」

とテーブルに置かれた書類の山を
揃えながら話を続けた。

「今、日本は経済的に過度期にあるみたい。仕事も原稿料も、どんどん増えてるの。お父さんが遺してくれたものもあるし、恭章が直ぐ大学に行かなくても構わないのよ?」

「でも、祖父ちゃんが――」

困惑するヤスに
ユミコは笑顔を見せた。

「自分の人生なんだから、自分が納得するまで全力で取り組んでごらんなさい? 大丈夫! 恭章なら、この先どこを目指そうと何をしようと、道を誤ったりしない。お父さんの子だもの」

ユミコが肩を抱いて励ますと
ヤスは小さく頷いた。

 

 

「いいな……」

ヤスの家から出るとフレッドは
ぽそっと呟いた。

確かに、ユミコとヤスの親子関係は
羨ましいものがある。
そんな弟の気持ちを察して

「さあ、兄ちゃんの胸に飛び込んでおいで⁉︎」って
両手を広げてみせたけど
フレッドは一瞬立ち止まるも
そのまま鍵を開け、
黙って家の中に入ってしまった。

そんな塩対応……
せめて何か言ってよ⁉︎

◇ ◇ ◇

いよいよ Club1000 でのライブが
始まろうとしていた。

前座のバンドは、僕等を含めて3組で
The Starlight Night が
トップバッターだった。
僕等は他のバンドと一緒に
楽屋で待機中だ。

トニィはストレッチで緊張をほぐし
ヤスは何度も譜面を確認している。

フレッドは、ギターケースに
いつも忍ばせている
子供の頃、託児所で貰ったらしい
ウサギのマスコットを
握り締めていた。
(可愛い)

マークは余裕で、他のバンドに
話しかけている。
「気を紛らわせてるだけだ」って
言うけど、頼もしいよ。

僕は軽くヴォイス・トレーニングを
するも、やっぱり緊張気味だ。

そんな僕の肩を叩きながら
マークはいつもの調子で
声を上げた。

「いつも通り、思いっきり暴れようぜ! さあ、皆んな行くぞ!」

始めから読む(No.3-001)