「実は、パティを連れて来てるんだ。後で会ってやってくれないか……?」
躊躇うようなサムの言葉に、
フレッドは明らかに動揺していた。
「も、もちろんOKだよ!」
真っ赤になっているフレッドの背中を
皆んなでバンバン叩きながら、
スタジオに向かった。
「おいおい、隅に置けないなぁ?」
「あの人の妹とは、どういう関係?」
「パティってどんな子? 可愛い?」
矢継ぎ早に飛んでくる
皆んなの攻撃を、
必死で交わすフレッド。
「わ、わかんないよ! もう何年も会ってないもの」
こんな突然に、しかも外国で
初恋の相手と再会だなんて、
奇跡じゃないか!?
僕は感動のあまり、可愛い弟に
勢いよく飛び付いた。
「やめて、ジェム! テレビに映ってるよ⁉︎」
★ ★ ★
バンドのデビュー延期が
告げられてから、もうすぐ2ヶ月。
サマーホリデーの季節になった。
トニィは無事に卒業して
ルイスに報告をと、喜び勇んでᒪAへ。
ヤスは、まだ夏休み前だけど、
休みに入ったらしばらくの間
ユミコと日本に滞在するからと、
日本の補習校にも通い始めて
忙しいみたいだ。
お隣さんとはいえ、
もう何日も会ってないよ。
僕はというと、音楽活動は
少々トーンダウンしていた。
なぜなら、試験勉強でナーバスに
なっていたフレッドがブチ切れて
「作詞は全部僕だなんて、負担が大きすぎる! ジェムも詩を書くべきだよ。じゃなかったらバンドの取り分の半分は、僕がもらうからね⁉︎」
なんて、生意気……いっぱしな
口を利いてきたから。
確かに、マークがいないと
音作りにもこだわりが強い
フレッドの負担は増している。
デビューが延期になったのは
僕のせいだし、作詞に挑戦する時間は
十分あるんだけど……
僕は言葉にならない思いを
音に託すタイプだからね?
と言い訳しつつ、鉛筆を転がす日々。
そして、フレッドの試験も終わり
ご機嫌が直るかと思ったけど、
別のストレスができたみたいだ。
◆ ◆ ◆
「フレッド、迎えに来たわよー♡」
エントランスには、複数の女の子達が
固まっている。
その様子をモニターで覗き見て、
げんなりするフレッド。
「ああ、今日も来たんだ……」
シックスフォーム[高校]を
卒業した彼は、ビデオカメラを
手に入れた同級生から
「試験結果を待つ間の気晴らしに、ショート・ムービーを作ってみないか?」
と誘われ、
バンドのプロモーション・ビデオを
制作する時に役立つかも、と参加。
そして、途中から合流してきた
女の子グループに、なぜだか
気に入られてしまったんだとか。
テレビのテロップ、デジタル化と共に賑々しくなったけど、昔は手書きで味わい深く画面もシンプルでした。CM前のこんなシーンや上部のテロップも、90年代に入ってからかな⁉︎(本当は提供も入れたいところw)そして番組タイトル、どこかで聞いた感じのを色々てんこ盛りにしちゃいました!(≧∇≦)