「こんなの落ち着いてられないよ! ジェムがそんな奴だったなんて、がっかりだよ」
そう言われて
僕も黙ってるはずがない。
「お前こそガキなんだよ。自分の理想ばかりで、周りの状況が見えてない。ロバートの、第三者の意見だって、ちゃんと聞くべきだ」
「聞いてるよ⁉︎ 聞いてて気にくわないから言ってるんだ。ハッキリ言わせてもらえば、ロバートの音は僕達には合わないよ。僕は自信あるんだ。僕達の音じゃなければ、売れっこないってね!」
「2人とも、兄弟ゲンカはやめろって! おいヤス、何とかしてくれ?」
トニィが助けを求めるも
「くだらないね」
そう呟くと、ヤスは
スタジオから出て行ってしまった。
頭を掻きむしるトニィ。
「待てよヤス⁉︎ あーもう、これはオレ達の問題なのに――」
とうとうメンバーが
バラバラになってしまった。
こんな時、マークが居てくれたら
彼なら何て言うだろう……
静まり返る室内。
落ち着きを取り戻したフレッドは
深呼吸すると、徐に口を開いた。
「じゃあジェム……改めて聞くよ? 時間やお金は抜きにして考えて。ただ単純に、ロバートのやり方が、このバンドに合っているかどうかだけ聞かせてよ?」
この問いかけに
僕はギクっとなった。
確かに、初めの頃はロバートの
プロのやり方を垣間見れて
舞い上がっていた節もある。
彼のすること全てが新鮮で
興味を持っていた。
だけど今は――
今はフレッドとロバートのやり取りに
ウンザリしていて
2人が何について話しているのかさえ
どうでもよくなっていた。
〝早く完成させたい〟
そのことしか頭に無かった気がする。
「いい質問だな?」
黙ったままの僕の肩を叩いて
トニィが続けた。
「もう気付いたね、ジェム。2人ともそれぞれ重要なことを忘れてるんだ。君は早く完成させたくて、曲のことを考えていない。フレッドは一部だけを見て、ロバートに反発ばかりしている。全体を見てみないと、どういう風に仕上がるか分かんないだろ?」
にっこり微笑むトニィに
後光が差してるように見えた。