そしてマークは
いつものように戯けて見せた。
「ふだん口煩い姉貴がさ、だまーってんのがスゲェ怖かったけど、でもライキーに出るのはOKもらったから。オレのラストステージ、成功させてくれるよな⁉︎」
「もちろんだよ!」
皆んな口々に声を上げた。
バンドからマークがいなくなるなんて
考えもしなかったし、こうして
いつもと変わりなく演奏していると
ライブが終わった後は、マークのいない
The Starlight Night になるなんて
とても信じられなかった。
ライブ前日、僕は開店前の
セント・ブライアンズを訪ねてみた。
ウォルターはカウンターで
ドリンクの補充をしながら
話してくれたよ。
「マークはあれでいて、とても不器用なんだ。家族のことが気にかかってる以上、心底音楽に集中できないんだろうな、きっと……」
それは、分かる気がする。
「あいつはまだ若いし、弟が成人する5、6年後には、またこの世界に戻れるよう整えていけばいい――そうアドバイスしたよ。あいつは音楽の道を、諦めたわけじゃないんだ」
ほっとした顔の僕を見て
ウォルターは小さく
溜め息を漏らした。
「ただ残念なのは、せっかく出会えた君達の元を去らなきゃならないことだ。君達とプレイしている時のマークは、今までになく伸び伸びしているし、なんといっても仲良く演れてるみたいだしね?」
僕が頷くと、ウォルターも
嬉しそうに頷いた。
「あいつは結構、神経質でね。これまで色々な奴らと演ってきたけど、上手くいかなかったみたいだ。辛抱強さが無いせいか、直ぐ逃げ出しちまう。まあ、未だに特定の彼女ができないのも、そのせいだろうな?」
とウォルターは笑う。
それに関しては、何もコメントする
立場にないけど。