そういうのに疎い僕は
「ポール・エドソンのライブは最高!」
なんてことを口にしながら
ポールが来てくれるのを
待ち侘びるばかりだった。
やっと姿を現したポールだけど
あちこちの関係者に
挨拶して回っている。
ポールはマネージャーから
何やら耳打ちされると
不安げな僕等に気付いたようで
人の波をかき分け、来てくれた。
「やあ、楽しんでるかい?」
彼の笑顔を見て
皆んな、ようやっと安堵した。
「そうそう、君達にお願いがあるんだ。来月はライキーでプレイするんだけど、君達にその前座を勤めてもらいたいんだが、どうだろう? もう一組、前座を増やしたいと思ってたところなんだ」
Club1000 より、更に大きな
ライブ会場での要請に
まるで夢を見ている気分だった。
そんな僕等の前に、一人の男が
慌てて飛び出してきた。
「君達、凄いじゃないか! スターライトっていったっけ? 是非、我がサイドトーク・レーベルの話を聞いてもらいたい。もちろん契約についてだ」
「け、契約だってさ!」
僕等の顔が、一様に紅潮する。
だけどマークが、その男に
何か言おうとした瞬間、
マークの肩を押さえたポールが
口を挟んだ。
「すまないが、彼等は私がこれと見込んだ有望株でね。どこぞの三流レーベルと、そう簡単に契約を交わすわけにはいかないな」
それを聞いた男は、ケッと舌打ちし
逃げるように去って行った。
「すみません、ありがとうございます」
「君はサイドトーク・レーベルのことを知ってるんだね? よく気を付けたほうがいい」
ポカンと口を開けて
2人のやり取りを見ていたメンバーに
マークは念を押した。
「つまり、闇雲に契約を交わせばいいってもんじゃ無いってこと!」
「もしかしてサイドトークって、レジュームってバンドで噂になった……?」
「そう、ヤスは知ってたみたいだな」
『マーキー・クラブ®』はジャズクラブとしてスタート。60年代は「スウィンギング・ロンドン」の代名詞としてミュージシャンの登竜門となり、今ではビッグネームになったバンドが多数出演。
先述の『100 club』もですが、老朽化や経営難を乗り越え、現在も運営されているって素晴らしいですね!