マークの合図でステージに立つと、
皆んな無我夢中で演奏した。
まばらだった歓声が
だんだん波のように押し寄せてきて
あっと言う間の15分だった――
◆ ◆ ◆
「終わったー!」
僕等はステージを降りると
興奮冷めやらぬまま、
楽屋に向かって歩き出した。
すると
「君たちのステージ、なかなか良かったよ」
そう一人の男が、拍手をしてくれた。
「「ポール・エドソン!」」
僕等は驚き、大きな声を上げた。
なんと、このステージの主役で
60年代から活躍している
ビッグ・アーティスト、
あのポール・エドソンが
僕等の演奏を
見てくれていたなんて!
そもそも、彼のような
アリーナクラスの大物が、
こんな小さな箱で演ること自体
信じられないことなんだ。
彼の前座だと知った時も
皆んな大興奮だったけど、
まさかこんな風に
声をかけられるなんて、
夢にも思わなかった。
「君たちとは少し話がしたいな。もしよかったら、この後のパーティーに来てみないか?」
もちろん、皆んな
飛び上がってOKしたよ!
「じゃあ、マネージャーに話しておくから、また後で」
そう言い残すと
ポールは颯爽と去って行き、
僕等は羨望の眼差しで
彼の後ろ姿を見送った。
ライブが終わると
ポールのマネージャーに案内され、
高級ホテルに到着。
「内輪のカジュアルなパーティーだから、気軽に楽しんでいってくれたまえ」
そうマネージャーに言われても、
場違いな雰囲気の僕等は
所在無さげに、隅のほうで固まっていた。
さすがのマークも
「こういうセレブな場は無理。いいオンナ見て、ちょっと目の保養するか」
と会場中を見渡している。
そう言いながらも真剣に見ているのは
プロデューサーやディレクター、
レコード会社や音楽出版社の
エグゼクティブ……etc.
女の子ばかりじゃなかったんだ。
ポール・エドソンのモデルはマッカートニー氏ではなく、特にいないけど同世代かな? 音楽的には『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』(1988) を出したスティングのように、かつてはバンドでロックして、ソロになってから大人サウンドへ移行……そんなイメージ。
Sting - Englishman In New York
この頃のスティングもポリスからソロになり、既に大御所感を漂わせていたけど、いい年になった今の自分が改めて見ると、まだまだ全然若僧だしカッコイイ!(≧∇≦)