「お前ら最高じゃん!」
マークも僕等に、拍手を向けた。
僕もフレッドもヤスも
こんなノリのある興奮は初めてだった。
(やっぱり、生のベース音は最高!)
「勝手に参加して悪かったな。でも久し振りだ、こんな明るいプレイができたのは」
彼はサングラスを外しながら
笑顔で近付いて来た。
「オレはマーク、この春カナダのバンクーバーから、ロンドンに来たばかりなんだ。よろしくな!」
どんな強面兄ちゃんなのかと思ったけど
サングラスを外した彼の面立ちは
もうすぐ17歳の、まだ幼さ残る笑顔で
僕等と握手を交わした。
「いや〜驚いたよ!? こんな住宅街の外れのガーデンで、こんな少年バンドが練習してるとはね! モニカの家、遠くて面倒いと思ったけど、泊めてもらって正解だったな。で、何ていうバンド? 何処のライブハウスに出てる⁉︎」
僕等3人は、思わず顔を見合わせた。
「別に僕達、バンドってわけじゃないよ? 皆んなの都合がついた時、たまに此処で演奏してるだけで……」
フレッドがそう答えると
マークはオーバーなアクションで
驚いてみせた。
「えっー、マジか⁉︎ そいつはもったいない! 君の声は色気があってイケてるし、君のギターは安定感抜群だし、君のサックスなんてプロ並なんじゃないのか⁉︎」
「Thank You」
僕等は照れながらも礼を言うと
彼はまた、凄い早口で喋りまくった。
まるで〝ボーイ・ジョージ〟みたいに!
「な、な、バンドやってみないか? こんなガーデンじゃなくってさ、本物のステージでギグ[ライブ]ってみたいと思わない?」
「えっ⁉︎ そりゃまあ、でも……」
僕等は彼の迫力に、しどろもどろ。
「だよなー! よーし、そうと決まれば善は急げだ、さぁ行こう!」
マークは機材を片付け始め
僕等は「えっ、えっ?」と
戸惑いながらも勢いに飲まれ
彼に引っ張られるまま
スターライト・ルームを後にした。
そこで参考になったのは、2016年の映画『シング・ストリート 未来への歌』。1985年のダブリンで、14歳男子が好きな娘を口説くため、バンドを結成する物語。彼らがMV撮影しようと、自分たちで機材を持ち運ぶシーンがありました。と言う訳で、マークも自力で運んでね!