マークに付いて行った僕等は
気付けばシティを越えて
イースト・エンド地区に入っていた。
この辺はロンドンでも
1、2位の危険地域なんだ。
不安げな僕等をマークは気にもせず
先日行われた〝ライブ・エイド〟について
熱く語ってる間に着いた所は
セント・ブライアンズという
ライブハウスだった。
マークの後ろから恐る恐る
階段を下りて、地下にある店内に入ると
いかにもって感じの客層で
フロアは、ごった返していた。
「ちょと待ってな?」
とマークが奥に消えると
ヤスが後ろから、僕の腕を突ついた。
「おい、なんかヤバイんじゃない?」
「ジェムは僕達の保護者なんだから、なんとかしてよ⁉︎」
フレッドまで僕を突く。
「なんとかって……」
考えてみれば、会ったばかりの
よく知らない外国人に
簡単に付いて来ちゃうなんて……
今の内に、此処から逃げようか?
そう口にしようとした瞬間
「お待たせ、こっちこっち!」
マークがスタッフ・ルームに手招きした。
「紹介するよ、オレの従兄のウォルター・マーティン。この店のマスターなんだ」
マークの隣には、何だか少し
この場にはそぐわない
ごく普通の、穏やかそうな男性が
立っていた。
例えるなら――
そう、小学校の先生って感じ⁉︎
「君達が、マークが見付けてきた金の卵なんだね? よろしく」
笑顔がちょっと、マークに似ている。
少しホッとした僕等は
ウォルターと握手を交わした。
「まあ見てなって⁉︎ オレの目の確かさを証明するから」
マークがウォルターの背中を
バンッと叩く。
「待て待て、順番があるんだ。準備できたら、直ぐ呼ぶから」
そうウォルターに言われ
頷くマークと一緒に、部屋を後にした。
「おっ、始まるな!」
ライブ・エイドが切っ掛けで楽器やバンドを始めた人達、世界中にたくさんいそうですよね(´∀`)