1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.5-008 Don't Be Scared

pick out: Bronski Beat

僕等はセント・ブライアンズの
1階入り口までやって来た。

店の看板は外されていたけど
外側からは、何ら変わった様子は
見受けられない。

扉に鍵は掛かってなかったので
ゆっくり寂れた暗い階段を下り
地下入口のドアを開けると、
甘い異臭を感じた。

元々ライブハウスやクラブでは
アルコールや煙草と同じように
マリファナ程度のドラッグは
珍しいものではないけれど、
今のこの状況は
そんな類の物だけではないと
容易に察せた。

ぼんやりとしたフットライトを頼りに
そのまま受付、そして
スタッフルームの前を進むも
人の気配は無い。

不意にヤスが足元の感触に気付き
それを拾い上げ、僕に手渡した。

「これ、もしかして――?」

それは小さなビニール袋で
中身は所謂〝白い粉〟だろうと
暗がりでも認識できた。


〈ガタン!〉

何かが倒れる音に驚き
僕は迂闊にもこの時、その小袋を
ポケットに入れてしまったんだ。

そして角を曲がり
恐る恐る場内に入ると
思わず鼻をつまむ程の悪臭が!

奥にあるステージの
わずかな明かりに目がなれてくると
悪夢のような排他的な光景が
目前に広がった。

ゴミやアルコールの残骸に混じり
注射器やスプーン、ライター等
ドラッグに使う小物が散乱。
遠くにうずくまり
倒れている人も見えて
僕等は立ち竦んだ。

まさか、ここまで酷い
状況になっていたなんて!

「ジェム、もう出よう⁉︎」

フレッドに腕を引っ張られた。
すると

 

「誰だ!?」

 

ステージの袖から
1人の男が現れた。

「お前ら、そこで何してる⁉︎」

暗がりの中、一歩一歩にじり寄り
僕等を確かめようとする男。

「逃げるんだ!」

僕の合図でフレッドとヤスが
走り出す。

「待ちやがれ!」

追いかけようと向かって来た
男を突き飛ばし、叫んだ。

「早く行け!」

その時、背後から
ナイフが襲ってきた。

 

「危ない !!」

 

フレッドの叫び声が響く。
僕を庇った腕を
切り付けられたんだ!

瞬時に
〝ギターが弾けなくなる〟
と焦り、怒りを覚えた。

ヤスが振り返り
足を向けたので怒鳴った。

「来るな! 行くんだ!」

僕はそこら中のものを投げ倒し
男に激しく抵抗するも
負傷したフレッドを
庇いながらでは
とても太刀打ちできない。

力を振り絞り
地上を目指して突き進むと
突然、眩しい光が届いた。

始めから読む(No.5-001)

 

 ジミー・サマービル(後のコミュナーズ)のファルセット・ボイスで繰り返される〝ランナウェイ〟が物悲しさを感じさせる、ブロンスキー・ビートの『スモールタウン・ボーイ』(1984)。歌詞は「ゲイの少年が家族に理解されない悲しみを胸に、生まれ故郷を後にする」といったジミーの半自伝的な内容なので、物語とは関連ナシw
 自分的には〝ランナウェイ〟って言ったら、ボンジョヴィかシャネルズ(ラッツ&スター)なんですけどね (^^ゞ
Music Video
Bronski Beat - Smalltown Boy
 

 

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