feat. XTC
「だからロバート! この詩の持つ意味を分かってるって言うなら、どうしてここに、そんな音を入れるの⁉︎」
「分かってないのは、君の方だよフレッド。ここは、もっと早いテンポで左右に振り分けないと、新鮮さが失われるだろう⁉︎ 君の音に対する考えは少々古いようだな。まだ若いのに残念だ」
「あー、また始まった……」
僕もトニィもウンザリしていた。
休日も返上になってしまい
ヘンリー達スタッフも
逃げ出すレベルだよ。
ヤスだけは、2人のバトルを無視して
サッサと次のサックスパートを
進めているけどね。
僕はトニィの隣に座ると
大きな溜め息を吐いた。
「まるで〝XTC〟並じゃないか! 僕等はいつの間に、そんな大御所になったんだ⁉︎」
「ロバートが次世代の〝トッド・ラングレン〟なら、君の弟も〝アンディ・パートリッジ〟のような奇才になるかもな?」
トニィは笑ってるけど
それは勘弁してよ。
「僕も神様に手紙を書きたい心境だよ?『親愛なる神様』先ず、あの2人を何とかしてくれ、ってね」
「手紙を読んでもらえると、いいけど」
肩を竦めるトニィ。
そこへスタッフが声をかけ
ロバートを連れ出してしまうと
フレッドは不貞腐れた顔で
勢いよく僕等の前にやって来た。
「あーもう、ロバートにはウンザリだよ! 彼は僕達の音楽性を、ちっとも理解してないんだ。僕達の音はあんな……あんな玩具みたいな音じゃない! あれじゃジェムの声の良さまで埋まっちゃうよ? それに何よりも頭にくるのは、マークが作ったベースラインを完全に無視してること! それで良くなるならともかく、あんな――」
「Stop Stop! フレッド、いい加減にしろよ!?」
この時の僕は、正直
愚痴を聞く余裕もなかった。
「ロバートは今まで何人ものアーティストを手がけてきたんだし、事実たくさんのヒット曲を生み出してるじゃないか? 僕等はまだ新人だけど、彼はプロなんだからさ――」
もう何日もスタジオに通っているのに
まだ一曲もまともに仕上がらない状態に
僕は苛立ちをつのらせた。
「二度と一緒に仕事しない」ってなるぐらい意見の合わない2人が、この『ディア・ゴッド』を炎上回避で、アルバムから外す意見には一致したようでw
でもアメリカのラジオから火が付きアルバムに追加され、シングルのA面にもなりアルバムも高評価という、何だか皮肉めいた感じがXTCらしいなと思ってます(ノ∀`)
XTC - Dear God