feat. Kate Bush
僕等はマークに引っ張られ
ステージの正面を陣取った。
先ず、パンクっぽいバンドの
演奏からスタート。
シンプルながらも激しいビートで
掴みはOKだ。
次は女性ヴォーカル。
幼げなルックスの割に
独自の世界観で歌い上げる様は
〝ケイト・ブッシュ〟を彷彿とさせる。
気が付くと、次から次へと
入れ替わり立ち替わり
常連達で盛り上がっていた。
フロアにいる何人かが、慣れたように
ステージに上がっている。
もちろんマークも、その一人だ。
もう、どこまでが客だか
演奏者だか分からない。
ハードロックから弾き語りまで
まるで音の洪水だ。
かつて僕が BAD MOUTH で
演っていた空間とは、全然違う。
これがライブハウスなんだ!
「どうだ? 何でも有りで面白いだろ⁉︎ 今日は『クレイジー・ナイト』。ノンジャンルで片っ端からステージに上がれる、音の細かいことは言いっこなしの、セント・ブライアンズ名物企画なんだ」
ステージを降りたマークが
ビターをグイッと飲み干して続けた。
「ここでは音楽に差別はしない。やる気さえあれば、あらゆるバンドをサポートしてくれる」
現にウォルターは要請されると
ギター、ベース、ドラム、ピアノと
何でもこなしていて、小学校の先生から
ベテランミュージシャンへと
変貌していたんだ。カッコイイ!
「ウォルターは若い頃、バンドデビューの話もあったんだけど、まぁ夢で終わったって……だから自分の代わりに世界の頂点に立つバンドを、発掘したいと思ってるんだ」
そう言って振り向いたマークは
僕等に不敵な笑みを向けた。
「それが自分の従弟だったら、最高だろ?」
「おーいマーク! 準備できたぞー」
ウォルターの呼ぶ声で
マークが僕等の背中を押した。
「行くぞっ!」
慌てたってもう遅い。
僕等は既に、ステージの上だ。
ケイト・ブッシュさんは TV 番組『恋のから騒ぎ』の OP 曲『嵐が丘』(1978) が有名なので80年代枠なのか微妙だけど、イギリス女性ヴォーカリスト代表として、ここでは『バブーシュカ』(1980) をご紹介。ちなみにワタクシ『嵐が丘』って割と長い間、矢野顕子さんだと思っておりました(爆)
Kate Bush - Babooshka