feat. Depeche Mode
「実は色々あって、デビューが伸びちゃったんだ」
僕等は事の流れを説明した。
「そうだったのか……まあレーベル側の思惑はともかく、こっちとしては〝Depeche Mode〟じゃないが、掴めるものは掴んでおきたいね。何事にもタイミングというものはある」
「『全てのことに意味がある』 よね? きっと、もっと良いタイミングで、デビューできるはずよ」
励ましてくれる2人に感謝し、
トニィが本題を切り出した。
「ジョージ、去年会ったとき話してたよな? セント・ブライアンズの経営を巡って、オーナーとウォルターの間に確執があるとかなんとか……」
僕もジョージを促す。
「セント・ブライアンズに行かない方がいいってことと、関連あるんだよね?」
「うん……」
彼はアンと顔を見合わせると
躊躇いがちに、話し出した。
「そうはいってもオレも当事者じゃないし、詳細は分からない。あくまで、あそこの常連達との噂話で耳にしただけだから。で、先ずは何を知りたい?」
観念したようにソファにもたれる
ジョージの眼を捉え、答えた。
「僕等の知らないこと〝すべて〟さ」
ジョージの話では、事の起こりは
セント・ブライアンズのオーナー、
ジェフ・ブライアンがギャンブルで
莫大な借金を作ったことから始まった。
ブライアンは祖父の代から続く
ダンスホールを、流行りの
ライブハウスに変えたものの
音楽には、まったく興味ないため
知人の紹介で知り合ったウォルターに
全てを任せ、豪遊する日々を
過ごしていた。
セント・ブライアンズは
ウォルターの人柄の良さもあり
常連達で、それなりの賑わいを
見せていたけど
経営に疎いウォルターは
(何せスタジオ経営に失敗している)
無名ミュージシャン達の
ステージ代を安く上げたりして
苦しい状態に陥っていった。
ブライアンは、それをカバーしようと
ギャンブルに手を出してしまったと
自分を正当化し
ウォルターは懐疑的となった。
こうしてブライアンと
ウォルターの対立は決定的となり
挙げ句の果て、ブライアンは
セント・ブライアンズを
借金のカタにして失踪。
しかしウォルターは頑として
立ち退きを拒否し、
営業を続けていたそうだ。
Depeche Mode - Everything Counts