1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスもメンバーのバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場します。時々イメージ・イラストも掲載!

No.1-024 Mollycoddle

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……悪かったよフレッド。ちゃんと家に帰る」
と両手を挙げてみせた。

そうなんだ、フレッドのお陰で
僕はこの泥沼から抜け出せたんだ!

するとフレッドは、少し照れながら
握手を求めてきた。

「改めてよろしく。ええっとジェームス・サミュエル・スミス?」

「いや、ジェームス〝スチュアート〟スミスだよ」
彼の手を、強く握り答えた。

「ミドルネーム、スチュアートなんだ⁉︎」

「そう、スチュアートを残したかったんだ。君は?」

「僕はそのまま、フレデリックアラン・スミスだよ。僕はこのままでいいんだ」

彼はダッドと同じミドルネームに
満足しているようだ。

僕等は家に向かうダブルデッカーに乗ると
フレッドが、不意に訊いてきた。

「ねえ、ジェムのミドルネームだった〝サミュエル〟の由来、知ってる?」

そんなこと
気にしたことも無かった。

「サミュエルは、グランダッド[祖父]のファーストネームなんだよ。実はね、グランダッドも亡くなったんだ。ダッドが亡くなる、ほんの1ヶ月前に……

僕はとうとう
一度も祖父に会うことは
できなかった。

フレッドは思い出すように
話し出した。

「ダッドとグランダッドは、わだかまりを残したまま逝ってしまった。グランダッドは意識が薄れゆく中、僕をダッドだと思って、ずっと謝り続けてたよ」

そういえば
ダッドはグランダッドに勘当されたって
だいぶ昔に、キャサリンから
聞いた覚えがあった。

「詳しい事情なんて、僕には分かんないよ。でも、こんなの悲しすぎるよ。生きている間じゃなきゃ駄目なんだ。死んでからじゃ遅いんだよ。だからジェム、マムのこと――」

「降りまーす!」

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