1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.1-023 Mollycoddle

「あの坊や、すっ飛んで行っちまったけど大丈夫かね?」
エースがボソッと呟いた。

「あっ!」

僕は慌てて、走り出した。

彼はロンドンの町に、まだ
慣れてないはず。道に迷っていたら……

いや、それより心配なのは
ブランドマークが付いた
ポロシャツを着た彼が、この通りを
無事に抜け出せるかどうか?

金を捕られるならまだしも
腕の1本や2本
折られることも、まれじゃない! 
下手すりゃ一生
病院行きの奴もいるらしい――

考えただけで、ゾッとした。
今まで自分は平然と
こんな所で、暮らしていたなんて!

 

〝フレッド、どうか無事で〟

 

一心にそう願い、走り回った。

そして大通りに出ると
ダブルデッカーを待っているフレッドが
そこに居た。

僕は安心して気が抜けたのか
それとも、久し振りに走ったせいか
膝の力が抜け
その場に座り込んでしまった。

「ジェム、どうしたの⁉︎
フレッドが、慌てて駆け寄って来た。

……良く無事で、あの通りを抜け出せたな?」

息を切らせている僕に触れた
彼の手の甲には
軽い擦り傷があった。

驚く僕に、気付くフレッド。

「ああこれ? 大したことないよ。変なお兄さんが道を通してくれないから、ちょっと避けただけ。大丈夫、走って逃げたから!」

そして、僕の顔を覗き込んだ。

「――心配してくれたの、兄ちゃん?」

僕は大きな溜め息を吐いた。

考えてみれば、彼は幼い頃から
父親と2人暮らしで
なにかと苦労もあったに違いない。

それを微塵も感じさせない
弟の笑顔を見て
とても恥ずかしくなった。

始めから読む(No.1-001)

 

 フレッドが父親と過ごしていた8年間の物語は、7章に執筆しました。弟は父親と2人暮らしでも、グレなかったみたい(´∀`)