1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスを含むバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場!

No.1-023 Mollycoddle

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「あの坊や、すっ飛んで行っちまったけど大丈夫かね?」
エースがボソッと呟いた。

「あっ!」

僕は慌てて、走り出した。

彼はロンドンの町に、まだ慣れてないはず。
道に迷っていたら……

いや、それより心配なのは
ブランドマークが付いた
ポロシャツを着た彼が、この通りを
無事に抜け出せるかどうか?

金を捕られるならまだしも
腕の1本や2本
折られることも希じゃない! 
下手すりゃ一生
病院行きの奴もいるらしい――

考えただけで、ゾッときた。
今まで自分は平然と
こんな所で、暮らしていたなんて!

 

〝フレッド、どうか無事で〟

 

一心にそう願い、走り回った。

そして大通りに出ると
ダブルデッカーを待っているフレッドが
そこに居た。

僕は安心して気が抜けたのか
それとも、久し振りに走ったせいか
膝の力が抜け
その場に座り込んでしまった。

「ジェム、どうしたの⁉︎
フレッドが、慌てて駆け寄って来た。

……良く無事で、あの通りを抜け出せたな?」

息を切らせている僕に触れた
彼の手の甲には
軽い擦り傷があった。

驚く僕に、気付くフレッド。

「ああこれ? 大したことないよ。変なお兄さんが道を通してくれないから、ちょっと避けただけ。大丈夫、走って逃げたから!」

そして、僕の顔を覗き込んだ。

「――心配してくれたの、兄ちゃん?」

僕は大きな溜め息を吐いた。

 

考えてみれば、彼は幼い頃から
父親と2人暮らしで
なにかと苦労もあったに違いない。

それを微塵も感じさせない
弟の笑顔を見て
僕は自分が、とても恥ずかしくなった。

始めから読む(No.1-001)

 

 フレッドが父親と過ごしていた8年間の物語は、7章に執筆しました。弟は父親と2人暮らしでも、グレなかったみたい( ´∀`)